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米国:2013年国別テロ報告書

2014年06月04日

米国務省が、4月30日、2013年の国別テロ報告書を公表した。それによれば、中東、アフリカを中心にアルカイダ系テロ組織やそれ以外のテロ組織が増加しており、テロの脅威が急拡大しているとのこと。しかし、アルカイダの本部については、多くの幹部の逮捕、殺害により指導力が低下している。このことは、アルカイダ本部の指導者ザワヒリが、2013年にシリア内戦に参戦したアルカイダ系テロ組織「イラクとレバントのイスラム国(ISIL)」と別のアルカイダ系テロ組織との対立を仲裁しようとしたところ、拒否されたことでも明らかである。ザワヒリは、2013年に戦術上のガイダンス「攻撃に際しては、巻き添えの被害を避けよ」(過去に、イラク:一般市民の巡礼者、イエメン:病院スタッフ・患者、ケニア:マーケットに買物に来た市民家族等の被害事例がある)を出したが、守られていない。テロ資金は、テロリストによる犯罪行為(身代金目的誘拐、脅迫、カード詐欺等)から得られるものや、湾岸諸国の富裕者からの寄付がテロ組織にも一部流れて資金になっている。イスラム過激派は、2013年、ソーシャルメディアを活用してメッセージを伝える活動を増強している。シリアは、テロリストの主戦場となっており、アサド政権との戦いに加わるため、数千人の外国人戦士がシリアに流入している。他方、アサド政権を守るため、イラン、ヒズボラ(レバノンのシーア派民兵組織)及びその他のシーア派戦士が支援を行っている。シリア内戦は、2013年に隣国イラクでの戦闘増大、激化にも大きな影響を及ぼした。また、内戦に参戦した外国人戦士が自国にテロを持ち帰る恐れがあると指摘している。報告書によれば、米国は2012年以来イランの情報保安省や革命防衛隊、ヒズボラが海外でのテロ支援活動を活発化させていることに警告を発している。2013年1月と12月に、イエメンの反政府組織ホーシー派(シーア派)とバーレーンの反政府勢力(シーア派)に対して、武器、爆発物を運ぶイラン船がイエメンとバーレーンの沿岸警備隊にそれぞれ拿捕された。また、タイは2012年2月にバンコクで起きたイスラエル人暗殺未遂事件で逮捕したヒズボラ工作員に対して2013年9月、有罪判決を下した。米国におけるテロとして、2013年4月に起きたボストンマラソンでのテロ事件を取り上げ、ホームグローン・テロリストによる犯行は、米国を含む国際社会に深刻な脅威を与えたとしている。

2013年国別テロ報告書は以下のサイトを参照。

http://www.state.gov/j/ct/rls/crt/2013/index.htm

報告書には米メリーランド大学に本部がある組織「National Consortium for the Study of Terrorism and Responses to Terrorism」(START)が作成した統計データが含まれている。それによれば、2013年に全世界でテロ襲撃事件は9,707件(前年比145%)発生した。国別ではイラク2,495件(同196%)、パキスタン1,920件(同137%)、アフガニスタン1,144件(同112%)、インド622件(同112%)、フィリピン450件(同319%)等としている、テロによる死者数は1万7,891人(前年比161%)、負傷者は3万2,577人、人質になった人数は2,990人。

報告書の内容は充実しており、2013年時点での各国のテロ情勢を知る上で有用であるが、将来のテロの発生予測については、特に触れられていない。2013年1月、アルジェリアのイナメナスでアルカイダ系テロ組織によるテロ事件(日本人10人を含む40人が殺害)が発生したが、報告書の2012年版では、アルジェリア南部やサヘル地域(サハラ砂漠南縁部の地域)で、「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)」の活動(密輸、外国人誘拐等)が活発化しているとの指摘はあるが、同地域でのテロ首謀者の動向、テロリストがリビアとの国境を越えてアルジェリアに侵入する懸念、石油・ガスプラント襲撃計画の可能性等については述べられていない。

一般的にテロ対策には、最新の現地治安事情を把握し(外務省海外安全ホームページの国別テロ・誘拐情報は参考になる)、テロが起き易い場所にはできるだけ近づかない、或いは近づく場合は安全対策を行って注意して行動する、現地事情に明るい専門家のアドバイスを聞く、テロに襲撃された場合の対応(模擬)訓練に参加する等が有効とされる。今後のテロ対策にあたり十分ご考慮下さい。 (森 英二)


注:本ニュースは、海外に渡航・滞在される方が、ご自身の判断で安全を確保するための参考情報です。ニュースを許可なく転載することはご遠慮下さい。

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