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ベネズエラ:劣悪な治安状況と物不足

2014年12月05日

ベネズエラの北西部ララ州にあるウリバナ刑務所で収監環境の改善を求めて11月25日から受刑者多数がハンガーストライキを行っていた。ベネズエラ刑務所省によれば、26日夜、受刑者らが暴徒化し、所内の診療所に侵入して、グレインアルコール(エタノール)と抗生物質、鎮静剤などを自分たちで混ぜ合わせて飲んだ。中毒症状を起こし、28日までに35人が死亡し、他に約100人が治療を受けているという。同国の人権監視団体は、「受刑者らが、表示ラベルを読まずに薬を飲むほどばかげたことはない」として政府発表を疑問視、調査を求めている。受刑者の家族は、「中毒症状を起こしたのは刑務所側が与えた飲料水を飲んだ後だ」と抗議している。ベネズエラの刑務所の中は無法地帯化していることで知られる。

今回の事態の背景には、最近赴任した新刑務所長が自らの権威を示そうと受刑者のボディチェックなどを厳しく行おうとしたことがあり、受刑者が騒ぎ出し抗議行動が起きたとされる。この刑務所には定員の4倍の3,700人が収容されているが、ベネズエラのどこの刑務所も過密状態が常態化している。受刑者の多さは、ベネズエラの治安の悪さを表している。今年1月に、元ミス・ベネズエラで中南米の人気女優でもあるモニカ・スビアさんが強盗に襲われて殺害され、2月には、同国出身の元WBA世界スーパーバンタム、フェザー級王者のアントニオ・セルメニョ氏が誘拐されて殺害されるというショッキングなニュースも流れた。

昨年3月に死去したチャベス前大統領の後継者であるマドゥロ大統領は、劣悪な治安状況に全く有効策を打ち出せないままである。経済面でもチャベス前政権下から相次ぐ企業国有化により生産性が低下しており、加えて(異常なまでの)価格統制や外貨の固定レート政策、対外債務の返済遅延(一部)等によって経済は大混乱が続く。食料品、日用品、医薬品、自動車部品等の物不足が深刻化し、断水や停電も頻発して、国民の不満拡大に拍車が掛かっている。今年2月12日の「青年の日」以降、全国において、反政府支持勢力と治安部隊及び政府支持勢力との衝突が続いたが、現在はほとんどの地域で沈静化している。しかし、騒ぎがいつ再発するか分からない状況にあるので、反政府支持勢力の抗議活動等には、引き続き十分な警戒が必要である。

ベネズエラの輸出の96%は原油が占めるが、最近の原油価格の下落により、総輸入額が大幅に抑えられる可能性がある。現地のメディア報道では、2年前に770億ドルあった総輸入額が、今夏以降、原油価格が30%下落したことにより、今年は約430億ドルに落ち込むとの予想で、インフレは今年の63%から来年は110%に達することが見込まれるとのこと。

マドゥロ大統領は11月28日のTV演説で、「原油価格の下落による収入減を悪く受け止めていない。贅沢と不必要な支出を削減するチャンスと捉えている」と発言して、政府支出と自身の報酬の削減を命令した。大統領の支持率は1年前の55%から最近の調査では25%に下落しているとの報道もある。来年には議会選挙(時期未定)が控えており、政府が公平な選挙を実施しないと、社会の緊張が一段と高まる可能性がある。

➀ベネズエラ滞在に際しては,最新の情報入手に努め、万一、騒動などに巻き込まれないよう注意が必
 要です。

②邦人が強盗、短時間誘拐などの被害に遭うケースも多発しており、外務省はベネズエラに対して危険
 情報(下記)を発出して十分な注意を呼び掛けています。
 ・カラカス首都区(全域),マイケティア国際空港周辺地域及びコロンビアとの国境地帯は「渡航の
  是非を検討」
 ・その他の地域は、「十分注意」
  http://www2.anzen.mofa.go.jp/info/pchazardspecificinfo.asp?id=260
  &infocode=2014T079#ad-image-0

③在ベネズエラ日本大使館の安全情報も併せご参照覧下さい。
 http://www.ve.emb-japan.go.jp/kinkyu/kinkyu.htm

④また、外務省は海外の在留期間が3か月未満の短期渡航者を対象に、いざという時、在外公館などか
 ら緊急時情報提供が(スマホ、PC等で)受けられる海外旅行登録システム「たびレジ」を今年7月1
 日より運用開始したので、旅行時のご利用をお勧めします。
 https://www.ezairyu.mofa.go.jp/
(森 英二)


注:本ニュースは、海外に渡航・滞在される方が、ご自身の判断で安全を確保するための参考情報です。ニュースを許可なく転載することはご遠慮下さい。

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