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シリア:イスラム国日本人殺害テロとこれからの安全対策

2015年02月04日

今年1月20日、イスラム過激派武装組織(イスラム国と名乗る)が、人質にとった日本人2人(湯川遥菜さんと後藤健二さん)について、日本政府が2億ドルの身代金を72時間以内に支払わなければ2人を殺害すると脅迫するビデオ映像をインターネット上で公開した。イスラム国は、日本政府がイスラム国対策として2億ドルの拠出(人道支援)を表明したことについて、「十字軍(欧米を意味する)に参加した」と非難し、同額を身代金として要求した。湯川さんは2014年8月、ジャーナリストの後藤さんは同年10月末、それぞれシリア国内で拉致された。在ヨルダン日本大使館に人質救出のための現地対策本部が設置された。

1月24日、インターネット上に湯川さんが殺害された映像が流れ、声明の中でイスラム国は、要求を2億ドルの身代金からヨルダンで収監中のイラク人女性死刑囚と後藤さんとの身柄交換に切り替えた。また、1月27日には、イラク人女性死刑囚の解放を24時間以内に行うことを重ねて要求し、解放が遅れれば、イスラム国に拘束されているヨルダン軍パイロットが、そしてその次に後藤さんが殺害されるとした声明を発表。ヨルダン政府は、イラク人女性死刑囚の解放にはパイロットの生存確認が条件となるとしたが、イスラム国はそれには応答せず、1月29日には、イラク人女性死刑囚をトルコ国境に移送するよう要求した。緊迫した状況の中で、2月1日、後藤さんを殺害した映像が公開され悲惨な結末を迎えるが、イスラム国は声明の中で、今後も日本人を標的とすると予告した。

また、ヨルダンのアブドラ国王が訪米中の2月3日、イスラム国はヨルダン軍パイロットに火を付けて殺害したとする映像をインターネット上で公開。ヨルダンを次の標的にして親米路線に揺さぶりをかけるものと推測される。ヨルダンは、パイロットが殺害されたのは1月3日であることを確認したと発表し、2月4日、イラク人女性死刑囚ら2人の死刑を執行した。
こうした一連の動向の中で、イスラム国は人質を残虐に殺害することで、自らの要求以外は受け付けない姿勢を示して、自らの存在感を世界に誇示する宣伝効果を狙ったものと思われる。

過去にも、イスラム過激派が日本をテロの対象として名指ししたことがある。2003年10月、オサマ・ビンラディンが、声明を出してイラク関連で米国を支援する英国、スペイン、オーストラリア、ポーランド、日本及びイタリアの6カ国の名を挙げて、攻撃を加えることに言及した。2004年10月、イラクを訪れた香田証生さんがイスラム国の前身組織に拉致、殺害された事件でも、犯行グループはイラクからの自衛隊の撤退を要求した。また、2008年4月には、アルカイダNo.2のアイマン・ザワヒリが、日本のイラクへの自衛隊派遣を「十字軍のための宣伝の一環だった」と非難する声明を出した。

今回のイスラム国による日本人を脅迫するテロ予告について、このことに過剰に反応する必要はないと考えるが、イスラム過激派によるテロ活動が活発化している状況に鑑み、テロ等を含む不測の事態に巻き込まれるリスクを、これまで以上に強く意識する必要はある。
イスラム国は、ソーシャルメディアを駆使して世界中にメッセージを発信しており、巧妙な宣伝活動により、多くの若者らを惹きつけて、イスラム国への支持者を増やし、戦闘員として加わる者も少なくない。自国でテロを行うホームグロウンテロリストの脅威や外国人戦闘員が自国に戻りテロを引き起こすリスクもある。世界でテロの拡散が懸念されており、テロ対策もグローバルな取り組みと不断の備えが求められる。
対策の一例として、以下もご参考に頂きたい。
1.渡航・滞在先について、最新の治安情報を入手して、テロ・誘拐等に巻き込まれないように用心する。
外務省の渡航情報(海外安全ホームページに掲載)や在外公館の安全情報(在留邦人にはメールによる配信サービスもある)を利用して、予防や緊急事態の対応に役立てる。
外務省海外安全ホームページ
http://www.anzen.mofa.go.jp/

また、外務省の短期旅行者向けの登録システム「たびレジ」を利用して、渡航・滞在先の渡航情報や緊急連絡等を受け取ることができる。
たびレジ
https://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/

在外公館や日本人会等が主催する安全講習会にはできるだけ参加して、他社との情報共有に努める。在外公館では在留邦人との安全対策連絡協議会を開催しており、現地治安情勢、リスク対策等の最新情報が得られる。
2.テロ対策例として、まず第一に、できるだけ目立たないということ。そしてテロリストの標的になり易い警察・軍の施設、人の集まる場所(ショッピングモール、集会、デモ等)、宗教関連施設、人けが少ないところ、夜の一人歩き等はできるだけ避ける。爆弾テロ、誘拐、襲撃等に対する具体的な予防、緊急時対応策等については、外務省海外安全ホームページに掲載の海外安全パンフレット・資料等を参考にする。
3.企業・団体は、社員や施設の安全を守るため、警備の点検、折に触れての注意喚起、社内安全対策会議の開催、安全講習会(海外赴任前研修、定期安全研修、万一に備えた模擬訓練等)の実施、緊急事態に備えた安否確認方法の運用等を着実に行うことが求められる。また、工場等では危険物の厳重管理が要請される。
  日本人学校、補習校等についても、適宜、安全対策の点検と整備の支援が求められる。
外務省は、2月1日付けで、広域情報「イスラム過激派組織のISIL(イラク・レバントのイスラム国)による日本人と見られる人物の殺害を受けた注意喚起(以下)」を発出しているので、十分にご注意下さい。
http://www2.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo.asp?infocode=2015C027
(長谷川 善郎)


注:本ニュースは、海外に渡航・滞在される方が、ご自身の判断で安全を確保するための参考情報です。ニュースを許可なく転載することはご遠慮下さい。

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