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チュニジア:外国人襲撃テロと外務省渡航情報

2015年03月20日

今年3月18日、午前11時頃、チュニジアの首都チュニス郊外にある(観光名所の)バルドー博物館の駐車場で、イスラム過激派武装集団がバスから降りてきた観光客に銃を乱射し、同館内に侵入して人質を取って立て籠もった。事件発生から約3時間後、治安部隊が突入してテロリスト2人を殺害。治安当局は、その後事件に関与したと疑われる20人以上を拘束した。チュニジア政府は、外国人観光客20人を含む21人が死亡し、47人が負傷したと発表。地中海周航のクルーズ船のツアーで同所を訪れた多くの観光客が犠牲となった。邦人も3人が死亡し、3人が負傷。当時、博物館内には100人以上の観光客がいたとされ、武装集団は外国人観光客をターゲットにしたと思われる。

チュニジアのカイドセブシ大統領は、(アルカイダ系の)「アンサール・シャリア」の犯行と断言したが、イスラム国(IS)が、3月19日に犯行声明を出した。どちらの組織によるものか、或は両者の一部メンバーが連携した行動かは不明であるが、犯行の動機は、外国人観光客を狙い撃ちにしたことから、チュニジアの主要産業である観光業に打撃を与えて政府を窮地に陥れ、且つ、世界のメディアの注目を集めることを狙ったものと推測される。

中東民主化運動「アラブの春」の発端となったチュニジアでは、2011年1月に23年間続いたベン・アリ政権が崩壊。紆余曲折しつつも世俗派とイスラム勢力が協調して、着実に政権移行のプロセスを進めて、2015年2月に、挙国一致の連立政権が発足し、新生チュニジアが誕生した。しかし、前政権崩壊後の不安定な状況下、以前からの雇用、格差、汚職、財源難等の深刻な問題が継続して、社会不満の高まりから過激派の活動が活発化。近年の主なテロ事件だけでも、以下が上げられる。

➀有力左翼政治家2人の暗殺(2013年2月&7月、アンサール・シャリアの犯行説)。
②スース県スース市で、観光ホテルへの侵入を試みた男が警察やホテル警備員に取り囲まれた後に自爆(2013年10月)。
③ベジャ県グブラートにおいてパトロール中の国家警察隊がテロリスト・グループに銃撃され、治安部隊側に死者2人、負傷者1人の被害(2013年10月、アンサール・シャリア犯行説)。
④武装集団がアルジェリア国境に近いチュニジア西部カスリン県シャアンビ山に設けられた国軍監視部隊の駐屯地2カ所を対戦車ロケットや機関銃を使って同時に襲撃し,兵士15人が死亡,23人が負傷(2014年7月、「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)」と関係を有する過激派「オクバ・イブン・ナファア」が犯行声明)。
⑤治安当局が政治家等に対する車両爆弾テロを計画していた容疑でテロリスト12人を逮捕(2014年10月、「アンサール・シャリーア」や「オクバ・イブン・ナファア」の犯行説)。

チュニジア治安当局は、チュニスを含めて特に西部、西南部、アルジェリア国境付近等で相次いでテロリストを摘発、また、南部のリビアから(軍事訓練を受けた)テロリスト及び武器の流入を警戒して、取り締まり強化を図っているが、十分な成果が上がっているとは言い難い。更に、シリア、イラクのイスラム国に戦闘員として渡航したチュニジア人は約3,000人に上り、その内500人位は国内に戻っており、チュニジアにとって大きな脅威となっている。

今後もテロは起きることが予想される。テロに巻き込まれないための安全の基本行動は、「テロの標的になり易い、危ないところには、近づかない。」である。どこが危険かは、外務省渡航情報に記載されているが、チュニスについて言えば、政府機関、軍・警察施設、人が多く集まる場所(大型商業施設、観光施設等)が該当するので、訪問する場合は、特段に注意を要する。

(外務省危険情報)
http://www2.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo.asp?id=113#ad-image-0

外務省危険情報によれば、チュニスは「十分注意してください。」の最下位のリスクカテゴリーにある。しかし、これは通常の注意ではなく、「危険を避けるための特別な注意を要する。」の強い注意を意味する。従って、外務省危険情報の具体的なリスク内容を把握して、更に(必要に応じて)現地事情に詳しいコンサルタントや専門家等のアドバイスも入手して、渡航の実施や安全対策について検討することが求められる。

外務省は、世界的にテロが多発している状況を踏まえて今後も日本人,日本企業,及び,日本人学校等の我が国の関係機関や組織がテロを含む様々な事件に巻き込まれる危険があるとして、2月1日付で「イスラム過激派組織のISIL(イラク・レバントのイスラム国)による日本人と見られる人物の殺害を受けた注意喚起 」を発出した。

http://www2.anzen.mofa.go.jp/info/pcwideareaspecificinfo.asp?infocode=2015C027

また、在エジプト日本大使館は、衛星TV局「ラービア」の1月29日報道を引用して、イスラム過激派組織「革命的懲罰運動」が、「エジプトに滞在する全ての外国人に、国外退去しなければ攻撃の対象とする警告」を出したとして、注意を促している。

http://www.eg.emb-japan.go.jp/j/consulate/demo/2015/20150201.htm

テロが起きやすい地域に渡航・滞在される方は、セルフディフェンスに留意して、十分にご注意下さい。 (長谷川 善郎)


注:本ニュースは、海外に渡航・滞在される方が、ご自身の判断で安全を確保するための参考情報です。ニュースを許可なく転載することはご遠慮下さい。

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