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南アフリカ:外国人移民に対する排斥運動激化

2015年04月24日

今年1月、ヨハネスブルグのソウェト黒人居住区で、ソマリア人が経営する商店で盗みを働こうとした南ア人の少年がソマリア人に射殺される事件が起きた。これに反発した南ア人らが、アフリカ系外国人が経営する商店を襲い、略奪行為が相次いだ。その後、事態は一時収まったかに見えたが、3月に有力部族ズールー族の王(King)が「高い犯罪率の原因は移民で、南アから出て行くべきだ」と発言したことが引き金となり、東部ダーバンでは暴徒化した住民がソマリア系やエチオピア系移民の商店等を次々に襲撃し、少なくとも7人が死亡した。略奪行為はヨハネスブルグにも拡大し、治安部隊によって鎮圧されたが、これまでに300人以上が逮捕され、5千人以上が避難民となった。背景には、高い失業率や貧富の差に対する不満が上げられる。

今回、南アフリカのメディア報道では、Xenophobia(ゼノフォビア)という言葉が使われている。「外国人嫌い」と訳されたりするが、南アでは「アフリカ諸国からやってきた黒人に対する南アフリカ黒人による差別」を表す。

1990年代初め、アパルトヘイトが廃止されるとモザンビークやジンバブエ等から出稼ぎ目的で貧しい人々が大量に流入した。低賃金で働き、犯罪も増えたことから、1990年代後半にはゼノフォビアが大きく取り上げられた。2008年には外国人移民に対する大規模な暴力行為が発生して、少なくとも67人が死亡したが、それ以降暴力事件は増加している。
これまで外国人移民排斥運動の対象はアフリカ系移民に限られてきたが、南アでは多数のアジア系の移民も商店経営等をして活動しているので、今後アジア系の移民も排斥運動に巻き込まれる可能性がある。

4月20日、暴動拡大のきっかけとなった有力部族ズールー族の王が聴衆を前に、「社会に平和が訪れることを希望する。アフリカ人はわれわれの兄弟であることを認識すべき」と演説して、外国人排斥運動の鎮静化を訴えた。

今回の暴動事態は治安当局の取締まり強化により収拾されつつあるが、外務省は4月23日付で「南アフリカ:外国人排斥運動を巡る情勢に関する注意喚起」と題する渡航情報(スポット情報)を発出した。「これまで邦人の被害報告はないが、暴動等の発生が確認されているタウンシップのほか、ダーバン、ヨハネスブルグ中心部への不要不急の立ち寄りを避けると共に、最新の報道等に注意して事態の推移の把握に努めるように。また、大規模集会やデモ等に遭遇した際には、すぐにその場所を離れるように」との要旨で注意を促している。皆様、十分にご注意下さい。
http://www2.anzen.mofa.go.jp/info/pcspotinfo.asp?infocode=2015C108

尚、今回のアフリカ系移民の排斥運動について、他のアフリカ諸国で南アに対する抗議デモが発生している。このためナイジェリアでは南ア大使館、領事館が一時閉鎖され、モザンビークでは南ア企業のトラックが投石を受けたりした。他のアフリカ諸国で抗議デモが起きたのは今回が初めてであり、今後南アで排斥運動が再発する事態には、他国への影響にも注意を払う必要がある。

追記:上記の事件と直接的な結び付きはないが、南アでは現在、電力不足のため国営電力公社(ESKOM)の計画停電が社会に深刻な影響を及ぼしている。安全上、更なる治安悪化にも繋がりかねないので、十分な注意が必要です。 (浮野 淳)


注:本ニュースは、海外に渡航・滞在される方が、ご自身の判断で安全を確保するための参考情報です。ニュースを許可なく転載することはご遠慮下さい。

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