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海外安全・危機管理 - 2021年の回顧と展望

2021年12月28日

                               NPO法人海外安全・危機管理の会
                                   専務理事 長谷川善郎

2021年も前年からの新型コロナウイルス感染症の流行が続き、企業・団体は安全対応に忙殺される1年でした。同年11月には新変異株のオミクロンが出現し、新たな対応を求められた。国際情勢では、ミャンマーで軍事クーデター、香港民主派活動家の大量検挙、エチオピア紛争、アフガニスタンでタリバンの復活、ウクライナ国境へロシア軍の進出などの緊急事態が続発し、国外退避などの危機対応も行われた。世界各地でテロ、抗議デモ、暴動、クーデター、凶悪犯罪、自然災害など様々なリスクも発生し、対策に多忙な年だった。

 
【Ⅰ】2021年の回顧

(1)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
今年も新型コロナウイルスの脅威が世界に暗い影を落とし続けた。6月以降、重症化し易いデルタ株に襲われたが、11月に南アフリカでオミクロン株が確認され、感染が世界に広まった。感染スピードが速く、一気にデルタ株からオミクロン株へ置き換わりつつある。mRNAの技術でワクチンが迅速に作られ、ワクチン接種が進んだ。また抗ウイルス薬の「モルヌピラビル」が開発されて、日本では厚生労働省が特例承認した。世界人口78億人に対して、2021年末の時点でコロナ感染者は2億7900万人、死者は539万人である。日本では173万人が感染し、1万8000人が死亡している。
コロナ感染拡大で1年延期された2020東京オリンピック・パラリンピックが7月-8月、無観客の下で開催され大過なく閉幕した。

< 2021年1月~3月 >                   (赤字は日本関係)
・1月7日 1都3県を対象に、新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言が発令され
      る(2月7日まで)

・1月9日 入国者全員に出国前の検査証明書の提出義務づけ
・1月13日 政府は大阪を含む7府県に緊急事態宣言を追加(1月14日~2月7日まで)
・1月13日 日本政府は外国人の入国を全面停止
・1月14日 WHO調査チームが武漢に到着し新型コロナ発生源などを調査
・1月18日 河野太郎行政改革相がワクチン担当を兼務
・1月19日 初期段階で中国の対応に遅れありとWHO独立委員会が中間報告
・1月28日 英国で報告された変異ウイルス株が69の国・地域で確認とWHOが公表
・1月28日 EUが日本からの渡航を再び原則禁止に
・2月1日 政府は10都府県で緊急事態宣言を3月7日まで延長
・2月9日 WHOの武漢調査チームが、「研究所からウイルス流出の可能性が低い」と発表
・2月13日 新型コロナまん延防止策措置や罰則などを盛り込んだ改正特別措置法施行
・2月14日 米ファイザー製ワクチンについて国内初の正式承認
・2月17日 ワクチン先行接種始まる、医療従事者約4万人を対象に
・2月27日 欧州各国が変異ウイルス拡大で規制の強化や延長の動き
・3月5日 首都圏1都3県の緊急事態宣言を2週間延長(3月21日まで)
・3月5日 新型コロナワクチン接種で国内初のアナフィラキシー症状
・3月12日 欧州でアストラゼネカ製ワクチン見合わせの動き、接種後に血栓の報告
・3月18日 政府は緊急事態宣言の全面解除を決定
・3月20日 5者協議が五輪の海外観客の受け入れ断念で合意
・3月21日 フランス・パリなどで3度目の外出制限、小売店の営業制限も
・3月23日 ドイツが変異ウイルス拡大で対策強化し食料品店も営業禁止とする(しかし、その後メル
      ケル首相が1日で営業禁止措置を撤回し謝罪)
・3月31日 ウイルス研究所から流出の可能性は極めて低いとWHO報告書 

<2021年4月~6月>
・4月2日 尾身会長が「第4波に入りつつある」と発言
・4月3日 政府は全世界からの入国者に2週間の待機要請
・4月3日 外国人の入国拒否は、新たに米国、欧州、インドネシア、タイ、中国、韓国を含む73カ
      国・地域に拡大
  
・4月4日 フランスで変異ウイルスが拡大し全土で3度目の外出制限
・4月5日 「まん延防止等重点措置」を大阪、兵庫、宮城に適用開始(5月5日まで)
・4月7日 大阪府が「医療非常事態宣言」を出す、医療崩壊のおそれあり
・4月8日 アストラゼネカ・ワクチンは「接種後の血栓に関連性あり」とEU規制当局が発表
・4月9日 「まん延防止等重点措置」を東京、京都、沖縄に12日から適用決定
・4月12日 高齢者へのコロナワクチン接種が始まる
・4月20日 「まん延防止等重点措置」を埼玉、千葉、神奈川、愛知へ適用
・4月21日 新型コロナ ワクチン接種後に231人が感染(感染率0.01%)
・4月22日 2月から始まった医療従事者(480万人)の3分の1がワクチンの1回目接種した
・4月25日 東京、大阪、兵庫、京都に3回目の緊急事態宣言(4月25日~5月11日)
・4月26日 タイの・プラユット首相がマスク外し会議出席し罰金を課される。外出時 着用義務化の初
      日だった
・4月26日 インドで新型コロナが 1日で最多35万人超の感染を確認
・4月28日 変異ウイルスの急速な広がり。大阪、兵庫、京都は8割超、東京5割超
・5月2日 外務省がスポット情報でインドの医療提供体制が逼迫と注意喚起
・5月5日 中国共産党組織がインドの感染状況をやゆするような画像をSNSに投稿
・5月7日 緊急事態宣言について、4都府県が31日まで延長、愛知 福岡も追加で宣言
・5月7日 宮城県がまん延防止等重点措置で飲食店15店舗に全国初の「命令」を発令
・5月8日 英政府の諮問委は40歳未満にアストラゼネカ・ワクチンを推奨せず
・5月11日 台湾が防疫警戒レベルを大規模集会の中止などとするレベル2に引き上げ
・5月12日 緊急事態宣言を6都府県に拡大。「まん延防止」は8道県に拡大
・5月13日 インドからの邦人帰国の為に外務省が現地に臨時の検査場設置
・5月13日 インド、パキスタン、ネパールに滞在していた外国人の入国を14日から原則停止
・5月17日 ワクチン大規模接種の予約が東京と大阪で始まる
・5月20日 仏で約7か月ぶりに飲食店が屋外営業を再開。音楽の都ウィーンで劇場公演が再開
・5月20日 ニューヨークのレストランなどで客の人数制限がなくなる
・5月23日 沖縄県が緊急事態宣言(6月20日まで)
・5月24日 WHO総会に台湾オブザーバー参加が認められず
・5月25日 米国務省は日本に関する渡航情報を4段階で最も厳しい「渡航中止の勧告」に引き上げ
・5月28日 9都道府県の緊急事態宣言が6月20日まで延長
・5月28日 インド等6カ国からの入国者10日間の停留措置
・5月31日 ファイザー・ワクチンが12歳~15歳も公的予防接種対象に決まる
・6月1日 ベトナムとマレーシアからの入国者に6日間の停留措置
・6月3日 東京五輪・パラリンピックについて「今の感染状況での開催は、普通はない」と尾身会長が
      発言

・6月4日 台湾にアストラゼネカ・ワクチン124万回分を贈与(6月25日には100万回分を追加贈与)
・6月6日 新型コロナが東南アジアで感染拡大し、マレーシアでロックダウン
・6月13日 ロシアで新型コロナ感染再拡大し、モスクワでは企業は5日間休業に
・6月17日 ベトナムにアストラゼネカ・ワクチンを100万回分贈与 
・6月17日 10都道府県の緊急事態宣言解除を決定、東京等はまん防措置に切り替え
・6月18日 尾身会長らが「五輪無観客が望ましい、入れるなら厳しい基準で」と提言
・6月19日 成田に到着したウガンダ選手団9人の中1人が陽性(6月23日、新たに1人の陽性が確認) 
・6月20日 米が台湾にモデルナ・ワクチン250万回分を贈与
・6月20日 ブラジルで新型コロナ死者50万人を超えて、ボルソナロ大統領への抗議活動が活発化
・6月21日 5者協議がまん防措置の解除を前提に五輪観客を「上限1万人」にすることで合意
・6月21日 企業・団体で職域ワクチン接種がスタート
・6月22日 インドネシアで新型コロナ感染再拡大、企業や市民活動の規制強化
・6月23日 イスラエルでデルタ株による感染再拡大でマスク着用義務再び導入
・6月25日 外務省が海外在留邦人向けに8月1日より成田&羽田空港でワクチン接種行うと発表
・6月25日 日本の関節リウマチ治療薬「アクテムラ」が 米国でコロナに緊急使用許可
・6月25日 経産省官僚2人が国の家賃支援給付金の搾取容疑で逮捕
・6月27日 インドネシアでは6月に入り再び感染拡大、26日は2万1000人とこれまでで最も多い。
      ジャカルタの病床率が90%埋まる

<2021年7月~9月>
・7月5日 イスラエル政府が米ファイザー製ワクチンについて、6月6日時点での感染防止効果が64%
      と発表
・7月9日 東京オリンピックは、1都3県は無観客で開催と決まる
・7月12日 東京に緊急事態宣言発令(8月22日まで)
・7月14日 インドネシアの日系企業1社が航空機をチャーターして駐在員・家族を日本に避難
・7月21日 インドネシアに政府特別便が7月30日&8月1日に運航することが発表される(大使館調べ
      で、邦人感染者約370人、死者17人)

・7月23日 五輪開会式が無観客で開催
・7月26日 インドネシア紙が7月1日~23日、スカルノ・ハッタ空港から退避した外国人は日本人
      2380人、中国人2053人、韓国人1432人、米国人1251人と報じた
・7月26日 ワクチンパスポートの申請受け付けが各市区町村でスタート
・7月27日 新型コロナ ワクチン配分量を来月後半に1割削減する方針を国が撤回
・8月1日 イスラエルで高齢者を中心に3回目のワクチン接種スタート
・8月3日 重症患者などを除き自宅療養を基本方針とする(その後、8月6日に中等症以上の人は原則
      入院に変更)

・8月4日 ニューヨーク屋内施設でワクチン接種証明書提示義務化へ(米で初めて)
・8月8日 フランスでワクチン接種証明の提示義務化に反対の大規模デモ
・8月12日 東京の感染拡大が制御不能な状況と東京都のモニタリング会議が指摘
・8月16日 アストラゼネカ・ワクチンを緊急事態宣言地域に投入
・8月19日 ファイザー・ワクチン3回目接種で86%発症予防か イスラエルの調査
・8月20日 新型コロナの自宅療養で救急要請も63%は搬送されず(東京都)
・8月21日 東京都「酸素ステーション」あさって開始 自宅療養中の悪化に対応
・8月26日 「抗体カクテル」外来診療でも投与へ
・8月27日 早朝、渋谷に長蛇の列、“若者接種”想定大幅超 える
・8月27日 学級閉鎖につき国が初の判断基準 「感染複数確認で5~7日程度」など
・9月2日 変異ウイルス「ミュー株」国内初確認
・9月7日 愛知・常滑の野外音楽フェス(8/27)で14人のクラスター発生、酒提供などで批判
・9月9日 緊急事態宣言、19都道府県で9月30日まで 延長を決定
・9月13日 変異ウイルス「イータ株」に18人感染、国内で感染判明は初めて
・9月13日 ワクチン2回接種が人口の50%超に、接種開始から7か月と政府公表
・9月24日 WHOは新型コロナの治療薬で、軽症患者などに対して、抗体でできた2種類の薬「カシリ
      ビマブ」と「イムデビマブ」を同時に投与する「抗体カクテル療法」を、初めて推奨

<2021年10月~12月>
・10月1日 緊急事態宣言とまん延防止等重点措置が10月1日に全て解除された
・10月22日 ファイザーがワクチン3回目接種の有効性95.6%と臨床試験結果を発表
・10月29日 新型コロナの新規感染者数がことしに入って最も少ない水準に(1日あたり265人)
・11月1日 新型コロナの死者が世界全体で500万人超える
・11月8日 ビジネス目的の入国時の待機を今日から3日間に短縮。外国人の入国も一部再開
・11月26日 WHOが新変異ウイルス「オミクロン株」を懸念される変異株に指定   
・11月30日 オミクロン株対応で11/30より外国人の新規入国が原則停止
・12月1日 コロナワクチン3回目の接種を今日から医療従事者対象に開始
・12月1日 帰国者・再入国者等の行動制限緩和措置を本日以降停止
・12月8日 米ファウチ博士がオミクロン株は「重症化あまり見られない」と発言
・12月20日 英ジョンソン首相が、ロックダウン中の20年5月に官邸の庭で開催されたパーティに参加
       していたことが問題化

(2)テロ・誘拐
IS(イスラム国)は、シリアとイラクに築いた領土を2017年に失い弱体化したが、ネット上で過激思想の拡散やリクルート活動を続けている。かっての欧米を標的とするグローバルな脅威から、ローカルなテロ活動をする存在に変わった。 主な活動地域として、イラク、シリア、西アフリカ、シナイ、中央アフリカ、東アフリカ、モザンビーク、パキスタン、アフガニスタン、東南アジアがある。対立するアルカイダも衰退し小勢力となっているが、アフガニスタン、パキスタン、シリア、サヘル地域などで活動を続け、再浮上を狙っている。
また、近年、白人至上主義やネオナチ的思想を背景にした極右過激派のテロが増加し、地域的にも拡散している。

< 中東・アフリカ >
・1月2日 マリ北東部で仏軍車両の近くでIEDが爆発、仏軍兵士2人死亡。仏軍事介入開始後の死者50
      人に上る
・1月3日 パキスタン・バルチスタン州で武装集団がシーア派炭鉱労働者を襲撃し、死者11人、ISが
      犯行声明
・1月21日 イラク・バグダッドの市場で連続自爆テロ、32人死亡、110人負傷
・1月24日 ソマリア中部で自動車爆弾、民間人20人死亡、数十人負傷、アルシャバブが犯行声明
・2月7日 ソマリア中部で自動車爆弾、兵士12人死亡、2人負傷、アルシャバブが犯行声明
・2月15日 イラク・エルビルで武装集団が襲撃し、米軍関係者1人死亡、数人負傷、親イラン・シー
      ア派民兵組織「血の復讐中隊」が犯行声明
・2月22日 コンゴ民主共和国の東部で、WFP(世界食糧計画)の車が武装勢力に襲撃され、イタリア
      大使ら3人死亡
・3月2日 アフガニスタン・ジャララバードで武装集団の襲撃で地元テレビ局の若手記者3人死亡
・3月5日 ソマリア・モガディシュで自動車爆弾、20人死亡、30人負傷、アルシャバブが犯行声明 
・3月24日 モザンビーク北部パルマの町をイスラム武装勢力が襲撃し掌握、労働者7人死亡、IS中央
      アフリカ州が犯行声明
・4月8日 マリでフランス人ジャーナリストが誘拐
・4月21日 パキスタン・クウェッタの中国大使宿泊のホテルで爆発、5人死亡、12人負傷、パキスタ
      ン・タリバン運動(TTP)が犯行声明
・4月26日 ブルキナファソ東部でイスラム武装勢力の襲撃によりスペイン人記者ら3人死亡
・5月8日 アフガニスタン・カブールのシーア派居住地区女子校前で自動車爆弾、85人死亡、150人以
      上負傷
・5月31日 コンゴ民主共和国・イトゥリ州村落で武装集団の襲撃により、住民少なくとも55人死亡
・7月14日 パキスタン北西部カイバル・パクトゥンクア州でバス爆発、中国人ら13人死亡、28人負傷 
・8月20日 パキスタン・バルチスタン州のグワダルで、走行中の車に男が近づき爆発、中国人1人負
      傷、パキスタン人子供2人死亡、2人負傷、バルチスタン解放軍が犯行声明
・8月26日 アフガニスタンのカブール国際空港付近で自爆テロ、少なくとも170人死亡。米兵13人死
      亡、18人負傷、タリバン戦闘員28人以上が死亡。ISホラサン州が犯行声明
・9月5日 イラク北部のキルクーク近郊の検問所をISが攻撃し、警官13人死亡
・9月13日 ブルキナファソでアルカイダやIS関連のイスラム過激派の襲撃により、5月~8月に市民
      480人が死亡
・9月16日 仏マクロン大統領がサヘル地域で活動する「大サハラのイスラム国(ISGS)」の指導者を
      仏軍が殺害したと発表
・11月7日 イラクで爆発物積んだドローンによる首相暗殺未遂
・11月16日 ウガンダのカンパラ中心部でイスラム過激派の連続自爆テロにより3人死亡、少なくとも
       33人負傷

< 欧州、ロシア・CIS >
・4月23日 フランス・パリ近郊ランブイエでチュニジア人が警察職員を襲撃し、女性職員1人死亡
・10月13日 ノルウェイでイスラム教に改宗したデンマーク人が市中で弓矢による襲撃を行い5人死
       亡、2人負傷 

< アジア >
・3月28日 インドネシア・スラウェシ島のマカッサルの教会で男女2人による自爆テロ。1人死亡、20
      人負傷
・3月31日 インドネシア・ジャカルタの国家警察本部にIS支持者の女が侵入して発砲。ケガ人はなし
・4月4日 インド中部チャッティスガル州で治安部隊が毛沢東主義派の武装勢力と銃
      撃戦になり、隊員22人死亡、30人負傷
・5月6日 モルディブ・マレでバイクが爆発し、元大統領を含め少なくとも6人負傷 
      (英人1人を含む)

< 北米、オセアニア、中南米 >
・7月7日 ハイチでモイーズ大統領が武装集団に暗殺される
・9月3日 ニュージーランド・オークランドのスーパーでIS支持者のバングラデシュ人がナイフで買い
      物客に切りつけ7人負傷
・10月16日 ハイチ・ポルトープランスで米国人ら外国人17人がギャング団に誘拐される

(3)世界重大リスク
2021年に日本企業・団体の海外安全・危機管理に特に影響を及ぼした重大リスク(新型コロナ、テロ以外)として、以下が上げられる。
・米国が、中国はウイグル人をジェノサイドしていると認定(1月19日)⇒米国税関でウイグル製品の
 輸入差し止め
・ミャンマーで軍事クーデターが発生し、国軍のミン・アウン・フライン総司令官が全権を掌握(2月1
 日)⇒ASEANの仲介も功を奏せず混乱が続く。ミャンマーの民主派勢力で作る「国民統一政府
 (NUG)」が、9月7日、国軍に対して戦闘開始を宣言
・香港警察が民主派47人を国家転覆共謀罪で起訴(2月28日)⇒香港国家安全保護法施行後で最大規模
・スエズ運河で愛媛の船会社所有の22万トンコンテナ船が強風で3月23日に座礁 ⇒29日に離礁する
 も、損害賠償金問題で100日間、現地に停留
・ウクライナ東部国境にロシア軍10万人以上集結し、G7外相が「深い懸念」を共同声明(4月12
 日)⇒ロシア軍が10月初め、ウクライナ国境に約9万の兵力を再び集結させ、米英等NATO諸国及び
 ウクライナとの緊張高まる
・イラン大統領選挙(6月18日)で、保守強硬派のライーシ氏が当選 ⇒イラン核開発問題で欧米とイ
 ランとの対立が続く
・南部アフリカ開発共同体(16カ国)がモザンビークに部隊派遣方針を決定(6月23日)⇒モザンビー
 ク北部ではISの活動が活発で、現地で天然ガス開発に従事する仏トタル等の外国企業の社員が退避す
 る事態にもなっている
・アフガニスタンでタリバンが首都カブールに進攻し外国人や現地協力者らが国外退避(8月15日)⇒
 日本政府もアフガニスタンに自衛隊機3機を派遣し、邦人&大使館・JICA職員ら約500人の救出に当
 たったが、結局、邦人1人しか救出できなかった。
・北朝鮮の国営メディアが新型の極超音速ミサイル「火星8」の発射実験に成功したと報じた(9月29
 日)。
・内戦中のエチオピアで、北部ティグレ州の反政府勢力、ティグレ人民解放戦線(TPLF)が首都アジス
 アベバに向かって進軍し、全土に非常事態宣言、外国人は国外退避の動き(11月2日)⇒結局、TPLF
 は戦闘に敗れ、12月22日、本拠地のティグレ州に撤退 
・中国の有名テニス選手が前副首相の性的暴行をSNSで告発(11月2日) ⇒女子テニス協会が中国のテ
 ニス選手の行方不明を理由に、中国でのすべての大会を中止と発表(12月1日)
・米国がウイグル人権問題を理由に北京五輪の「外交的ボイコット」を正式発表(12月6日)⇒欧米、
 カナダ、豪州、日本等は閣僚参加しないと表明

(4)2021年のその他の世界情勢の特記事項
・1月6日 米議会議事堂にトランプ支持者らが突入、1人死亡
・1月15日 チュニジアで若者らが暴徒化、治安部隊と衝突、632人逮捕
・1月23日 ロシア各地で反体制派指導者ナワリヌイ氏の釈放を求める大規模デモ
・2月10日 タイで 2か月ぶりに大規模な反政府デモ、首相の退陣などを求める
・5月10日 イスラエルとパレスチナが激しい攻撃の応酬
・5月23日 ベラルーシ当局が旅客機を緊急着陸させ反政権派ジャーナリストを拘束
・5月24日 マリ軍が暫定政府の大統領と首相を拘束 
・7月11日 南アフリカのヨハネスブルグ、ダーバン等で暴動、略奪
・7月11日 キューバで食料品や医薬品不足を抗議する大規模デモ
・8月29日 米国・ルイジアナ州にハリケーン「アイダ」が上陸。5段階の2番目に大きい勢力、46人以
      上死亡
・9月1日 中国・大連の京都風商業施設が日本文化の進入批判で一時営業停止
・9月5日 ギニアでクーデター、特殊部隊が大統領を拘束
・9月6日 ロシア とドイツを結ぶ天然ガスパイプライン「ノルド・ストリーム2」が完工
・9月29日 中国各地で電力不足、日系企業などの工場にも影響出る
・9月30日 今年8月頃からベラルーシ・ポーランド国境に中東移民が大挙押し掛ける。
・10月18日 中国軍とロシア軍の艦艇10隻が津軽海峡を初めて同時通過
・10月25日 スーダンで軍のクーデターが発生
・11月11日 中国共産党の重要方針を決める「6中全会」が「歴史決議」を採択
・11月23日 トルコでは通貨のリラが史上最安値を更新し、政権への批判が高まる
・12月10日 米南部や中西部の6つの州で竜巻が相次いで発生し大きな被害、死者100人以上 

(5)窃盗、強盗等一般犯罪
外務省の2020年海外邦人援護統計によれば、2020年に日本人が海外で犯罪被害に遭った件数は1,309件で、内訳は窃盗942件(全体比72%)、詐欺154件(12%)、強盗・強奪80件(6%)、傷害・暴行53件(4%)、脅迫・恐喝24件(2%)等となっている。誘拐被害はなかった。新型コロナウイルスの流行で、海外渡航者が大幅減少したため犯罪被害件数も例年の3割程度となった。近年の日本人の犯罪被害推移は、2017年4,531件、2018年4,768件、2019年4,823件、2020年1,309件となっている。

(6)交通事故
海外で交通事故に遭って死傷される邦人は少なくない。企業・団体の安全担当者は、社員に対して交通安全についての継続的、効果的な注意喚起(注)を行い、事故発生時の対処要領を心得ておくことが必要である。
(注)交通安全の3原則の遵守:①法定速度内で走行、②後部座席もシートベルト着用、③飲酒運転の禁止
外務省の海外邦人援護統計によれば、近年の交通機関事故による死傷者は、2017年:死亡21人、負傷43人、2018年:死亡20人、負傷70人、2019年:死亡8人、負傷82人、2020年:死亡5人、負傷30人。
外務省統計では、2020年の主な交通事故として下記が上げられている。
2月:マレーシア・スランゴール州において、タクシー乗車中の交通事故により、邦人1人が死亡。
3月:オーストラリア・ビクトリア州において、乗車中の交通事故により、邦人1人が死亡。
3月:オーストラリア・ビクトリア州において、歩行中の交通事故により、邦人1人が死亡。
11月:カナダ・ブリティッシュコロンビア州において、自転車乗車中の交通事故により、邦人1人が死
    亡。
12月:米国・カリフォルニア州において、歩行中の交通事故により、邦人1人が死亡。

(7)健康管理
・2021年は新型コロナウイルスが世界でまん延し、健康管理の教育と徹底、ウイルス検査、ワクチン
 接種、出張者や海外駐在員の健康管理、来訪者の健康管理などが行われた。
・外務省の2020年海外邦人援護統計には傷病者数986人(内、死者329人)とあるが、新型コロナ関係
 者も含まれると推測する。
 

【Ⅱ】2022年の展望

(1)企業・団体のこれからの新型コロナ対策
①新型コロナ予防の基本対策を着実に実施 ⇒マスク着用、手洗い、3密回避、換気、会食時は十分注
 意。
②政府、自治体の感染予防対策はタイムリーに、且つきめ細かく行われるので、指示、要請内容を把握
 してできるかぎり守る。産業医、顧問医等に相談。
③これまでの新型コロナ対策の経験、実績を踏まえて、BCP(事業継続計画)の適時見直し
③他社との意見交換の機会を持ち参考にする。

(2)世界情勢の主なリスク要因
①2022年の注目選挙
 ・韓国大統領選挙(3月9日)
 ・フィリピン大統領選挙(5月9日)
 ・ブラジル大統領選挙(10月2日)
 ・米国中間選挙(11月8日)
 ・中国共産党大会(2022年秋)― 習近平総書記の3期目選任は確実視
②米中対立
 ・中国による南シナ海、東シナ海における一方的な現状変更の試みと経済的圧力
 ・ウイグル、香港、チベット等の人権問題
③台湾海峡の危機
④北朝鮮の核・ミサイル開発
⑤ウクライナ問題
⑦イラン核合意の行方
⑧ミャンマー、アフガニスタン、イエメン、リビア、エチオピア等の問題国
⑨トルコのエルドアン大統領による強硬的政治と外交
⑩サイバー攻撃による国際緊張

(3)テロ・誘拐の動向
①イスラム過激派の活動がコロナ禍に乗じて再び活性化する可能性が高い
 ・一時は弱体化したIS(イスラム国)が、2020年春頃よりシリア、イラクでゲリラ的戦闘を行ってお
  り、2021年に続いて2022年も攻勢が続く見込み。
 ・過激派グループはアフリカや南西アジア、東南アジアでも伸長している。SNS(交流サイト)を通じ
  て新型コロナを「神の罰」などとする主張を繰り返し、過激思想を持つ、或いは生活苦に喘ぐ若者
  らに組織への加入を呼びかける。
  主な過激派組織として、ボコ・ハラム(ナイジェリア)、アルシャバブ(ソマリア)、IS中部アフ
  リカ州(モザンビーク)、タリバン(アフガニスタン、パキスタン)、ジェマ・イスラミア(東南
  アジア)等。
 ・欧米諸国を中心に、過激思想に染まってテロを行うホームグロウン型(自国育ち)やローンウルフ
  型(一匹狼)のテロも散発。
②欧州、北米、オセアニアでは極右テロが目立ち増大が予想される。
 

【Ⅲ】NPO法人海外安全・危機管理の会(OSCMA)

①当会は、2019年4月より、菅原 出(国際政治アナリスト)が代表理事に就任し、「人を育て社会に
 貢献する危機管理の総合シンクタンク」として、3つの事業に取り組んでいる
②新生OSCMAの3つの事業は、外交・安全保障プロジェクト、海外安全・危機管理プロジェクト、災
 害危機管理サバイバル教育プロジェクトで、21年1月~12月の主な活動は以下の通り。
1)外交・安全保障プロジェクト
 ・外交・安全保障月例セミナーの開催
 ・OSCMA危機管理人材育成講座の開催(4月~12月間に8回)
 ・外交・安全保障サマーセミナーの開催(9月)
2)海外安全・危機管理プロジェクト
 ・OSCMA危機管理情報のデイリー配信
 ・海外における安全対策、危機管理対策についてさまざまな講演
 ・企業・団体の危機管理者向けにオンライン個別相談会の開催(21年12/1~22年2/28)
3)災害危機管理サバイバル教育プロジェクト
 ・72時間サバイバルコーチ養成講座(72時間サバイバル教育協会との共催で11月に実施)

2022年も3つのプロジェクトの充実した活動に取り組みます。引き続き、当会のNPO活動へのご理解、ご指導、ご支援の程宜しくお願いいたします。

(備考)2021年日本人・日本企業に関連した主な事件・事故・災害等
・1月7日 1都3県を対象に、新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言が発令され
      る(2月7日まで)
・1月13日 日本政府は外国人の入国を全面停止 
・2月1日 ミャンマーで軍事クーデターが発生し、国軍のミン・アウン・フライン総司令官が全権を掌
      握
・2月17日 日本国内で医療従事者約4万人を対象にワクチンの先行接種始まる
・3月23日 スエズ運河で愛媛の船会社所有の22万トンコンテナ船が強風で座礁 
・3月24日 モザンビーク北部パルマの町を「IS中央アフリカ州」が襲撃し掌握、労働者7人死亡
・2月28日 香港警察が民主派47人を国家転覆共謀罪で起訴
・4月12日 ウクライナ東部国境にロシア軍10万人以上集結し、G7外相が「深い懸念」を声明
・5月13日 インドからの邦人帰国のため、外務省が現地に臨時のコロナ感染検査場を設置
・6月21日 企業・団体で職域ワクチン接種がスタート
・7月11日 南アフリカのヨハネスブルグ、ダーバン等で暴動、略奪
・7月23日 2020東京オリンピックの開会式が無観客で開催
・7月30日 インドネシアに邦人帰国のための政府特別便を運航(8月1日も)
・8月15日 アフガニスタンでタリバンが首都カブールに進攻し外国人や現地協力者らが国外退避
・8月26日 アフガニスタンのカブール国際空港付近で「ISホラサン州」が自爆テロ、少なくとも170
      人死亡(米兵13人を含む)
・8月29日 米国・ルイジアナ州にハリケーン「アイダ」が上陸。5段階の2番目に大きい勢力。46人以
      上死亡
・9月29日 中国各地で電力不足、日系企業などの工場にも影響が出る
・10月初め ロシア軍がウクライナ国境に約9万の兵力を再び集結させ、米英等NATO軍と緊張高まる
・11月2日 エチオピアの北部ティグレ州の反政府勢力「ティグレ人民解放戦線(TPLF)」が首都アジ
      スアベバに向かって進軍し、全土に非常事態宣言、外国人は国外退避の動き
・11月7日 イラクで爆発物積んだドローンによる首相暗殺未遂
・11月30日 オミクロン株対応で11/30より外国人の新規入国が原則停止
・12月6日 米国がウイグル人権問題を理由に北京五輪の「外交的ボイコット」を正式発表
・12月10日 米南部や中西部の6つの州で大竜巻が相次いで発生し、死者100人以上 

以上


注:本ニュースは、海外に渡航・滞在される方が、ご自身の判断で安全を確保するための参考情報です。ニュースを許可なく転載することはご遠慮下さい。

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