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海外安全・危機管理 ― 2022年の回顧と展望

2023年01月04日

                               NPO法人海外安全・危機管理の会
                                   専務理事 長谷川善郎

2022年は、ロシアのウクライナ侵攻、オミクロン株によるコロナ感染拡大、国際商品相場の高騰とインフレ加速、中国ゼロコロナ政策の混乱、台湾有事問題、北朝鮮の核兵器開発と大量ミサイル発射、世界経済の悪化など、想定外の展開となりました。22年に引き続き、国際社会は23年も厳しい対応を迫られます。

 
【Ⅰ】2022年の回顧
 
(1) ロシアのウクライナ侵攻
 
ウクライナをロシアの影響下に置きたいとのプーチン大統領の願望のもと、「プーチンの、プーチンによる、プーチンのための」ウクライナ侵攻が、2022年2月24日に始まった。
ロシア軍(約19万人)はベラルーシ、ロシア北東部及びクリミアの3方面からウクライナに侵入したが、ウクライナ軍と武装市民による抵抗により各地で停滞。本来ならば、ロシア軍の侵攻数日後にはウクライナの首都キエフ(キーウ)は制圧され、ヤヌコビッチ元大統領を新大統領とする親ロ派傀儡政権を樹立する構想になっていた。
ロシア軍はウクライナ東・南部4州の掌握を目指して攻撃を続けるが、一方、ウクライナ軍は欧米の軍事支援を受けて抵抗し、激しい攻防が続くなか戦況は膠着し、長期化するとの見方が強まっています。
ウクライナ軍のザルジニー総司令官は23年1月2日、昨年2月以降にロシアにより占領された領土のうち、約40%を昨年末までに奪還したと明らかにした。
プーチン大統領は昨年9月、「領土が脅かされればあらゆる手段をとる」などとして、ウクライナ侵攻における核兵器使用の可能性について言及しました。西側はプーチン氏を暴走させないように、核兵器を使っても勝利の見込みはない、目的は達成できないということを示し続けるよう、慎重に対応している。

<これまでの経緯>
・2004年11月 オレンジ革命(ウクライナ大統領選挙結果に対する抗議・政治運動)
・2014年2月 マイダン革命(親ロ派のヤヌコビッチ大統領がロシアに亡命)
・2014年3月 ロシアがクリミアを併合
・2014年4月 ドンバス地域(ドネツク州とルハンシク州)で戦闘が始まる
・2014年9月5日 ミンスク議定書(ウクライナ、ロシア、ドネツク人民共和国、ルハンシク人民共和
         国がドンバス地域での戦闘停止に合意)
・2021年12月30日 米露首脳が電話会談。バイデン大統領はプーチン大統領にウクライナに侵攻した
          ら断固とした対抗措置を採ると明確に伝える
(2022年)
・1月2日 米・ウクライナ首脳が電話会談。バイデン大統領はロシアがウクライナ侵攻したら断固とし
      た措置を採るとゼレンスキー大統領に伝える
・2月10日 バイデン大統領がウクライナにいる米国民に退避勧告
・2月12日 米露首脳が電話会談。事態の進展はみられず。米国はウクライナ侵攻の場合には「深刻な
      代償」をロシアが支払うと警告
・2月21日 プーチン大統領が、親ロシア派が事実上支配する「ドネツク人民共和国」と「ルハンシク
      人民共和国」を国家承認し、平和維持軍の派遣を検討と発表
・2月22日 米政府は、ロシアがウクライナ東部の親ロシア派地域の独立を承認したことを「ロシアに
      よるウクライナ侵攻の始まり」として、第1弾の対ロ制裁を発表
・2月24日 ロシア軍がウクライナに侵攻開始。プーチン大統領は「特別軍事作戦」の決行と発表。ゼ
      レンスキー大統領は全土に戒厳令を敷きロシアと断交
・2月25日 国連安保理がロシア非難決議、ロシアが反対して否決
・2月26日 米とEUが国際決済網のSWIFTからロシア排除を表明。日本も後日、参加表明
・2月27日 プーチン大統領が核戦力を「特別態勢」に移すよう命令
・2月28日 ロシアとウクライナが1回目の停戦協議。隔たり大きく終了
・2月28日 英シェルが極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」から撤退を発表
・3月1日 米エクソンモービルは、「サハリン1」から撤退する作業開始を発表
・3月3日 2回目の停戦協議。「人道回廊」の必要性で一致
・3月4日 ロシア軍がウクライナ南部のザポロージェ原発を制圧
・3月14日 国連グテレス事務総長が「核戦争起こり得る」と発言
・3月16日 国際司法裁判所がロシアに即時侵攻停止を命じるもロシア拒否
・3月23日 ゼレンスキー大統領が日本の国会で演説、「制裁継続を訴える」
・3月29日 ロシアとウクライナの停戦交渉がトルコ・イスタンブールで始まる
・3月31日 ロシア軍が首都キーウ州の周辺地域から撤退し、ウクライナ軍が奪還。ロシア軍によるブ
      チャ虐殺が発覚
・4月13日 ロシア黒海艦隊の旗艦「モスクワ」がウクライナ軍の対艦ミサイル攻撃により被弾、沈没
・4月25日 ロシア外相が核戦争の可能性に「リスクは十分ある」と発言
・4月27日 プーチン大統領が演説で核使用の可能性を示唆
・5月17日 南東部要衝マリウポリが陥落、アゾフスターリ製鉄所でウクライナ軍部隊が投降
・5月18日 フィンランド、スウェーデンが北大西洋条約機構(NATO)加盟申請
・6月29日 バイデン米大統領が欧州の米軍戦力増強を表明
・6月30日 ウクライナがロシアから黒海要衝のズメイネイ島奪還
・7月5日 ロシア軍がウクライナのザポロージェ原発を軍事基地化と米報道
・7月11日 ロシアがウクライナ全住民のロシア国籍取得を簡素化
・7月19日 プーチン大統領がイラン訪問し、最高指導者ハメネイ師らと会談
・7月22日 ウクライナとロシアがウクライナからの穀物輸出で合意
・8月5日 サハリン2の運営新会社「サハリンスカヤ・エネルギヤ」の設立
・8月30日 ウクライナ軍が反転攻勢の大規模作戦を開始
・9月11日 ゼレンスキー大統領がウクライナ東部のハリキウ州イジュームを奪還と発表
・9月21日 プーチン大統領が、予備役30万人対象の部分的動員令を発令
・9月27日 ノルドストリーム①と②のパイプライン計4カ所がデンマーク近海で爆破される。ロシア
      による犯行が疑われる
・9月30日 プーチン大統領がウクライナ東・南部4州の合併を決定
・10月1日 ゼレンスキー大統領がドネツク州の要衝リマンを奪還と発表
・10月5日 日本政府は22年3月に一時的に閉鎖したウクライナの日本大使館の業務再開
・10月5日 ウクライナ大統領が南部のロシア占領地を相次いで奪還と発表
・10月8日 クリミア半島とロシア本土を結ぶクリミア大橋が爆破される
・10月10日 ウクライナ侵攻のロシア軍総司令官が交代
・10月10日 ロシアがウクライナ全土の電力施設を狙ってミサイル攻撃。翌11日以降も継続
・11月11日 ウクライナ国防省が南部のヘルソン市を奪還と発表
・11月14日 ロシア政府がサハリン1の新運営会社に対し、日本のSODECOの出資(30%)を承認
・11月15日 ポーランドにミサイル着弾し市民2人が死亡。ウクライナ軍の迎撃ミサイルの可能性が高
       い
・12月2日 G7とEU及びオーストラリアは対ロシア追加制裁として、ロシア産原油の取引価格(FOB)
      に1バレル=60ドルの上限を設けることで合意
・12月5,6日 ウクライナはロシア国内の空軍基地など3カ所にドローン攻撃
・12月19日 EUは対ロシア追加制裁として、ロシア産天然ガスの価格上限の設定を1メガワット時
      (MWh)当たり180ユーロとすることで合意
・12月21日 ゼレンスキー大統領が訪米し、議会で演説
・12月31日 首都キーウへのロシア軍のミサイル攻撃で、日本人記者1人も負傷 
 
(2)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大
 
2019年12月に中国・武漢市で発生した新型コロナウイルス感染症は世界に広まり、20年、21年に続き22年も流行が続き、企業・団体は安全対策に忙殺されました。
2021年11月に南アフリカで発見された新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」は、それまで主流であった「デルタ株」に置き換わって世界の主流株となっている。また、BA.2やBA.4、BA.5など亜系統も出現しており、既存の系統から置き換わりつつ大流行を度々引き起こした。こうした中、22年はwithコロナ(新型コロナとの併存)の取り組みや欧米を中心にマスク着用を最小限にする行動も進んだ。
一方、中国では、厳しい「ゼロコロナ政策」が2022年12月に緩和されたことから、年末感染者が急増し混乱を招く。

<2022年1月~3月>                    (赤字は日本関係)
1月5日 オミクロン株 感染急拡大の地域で自宅療養認める通知 厚労相
・1月5日 ヨーロッパで感染拡大歯止めかからず 各国で感染者過去最多に
1月6日 日本医師会長「全国的に第6波に突入 “まん延防止措置” 早めに」
1月15日 濃厚接触者の待機期間を14日から10日に短縮。全国の自治体に通知 厚労省
1月18日 政府 「まん延防止措置」13都県に適用 1月21日から2月13日まで
1月21日 5歳~11歳の子ども対象 ワクチン接種 厚労省が正式承認
1月22日 新型コロナ 国内新規感染者 初の5万人超え
・1月27日 英国・イングランドでマスク着用義務規則の撤廃
1月28日 岸田首相 濃厚接触者の待機期間 10日間から7日間に短縮
2月17日 東京都 「BA.2」都内で市中感染とみられる事例を初確認と発表
2月27日 国内の主流は「BA.1.1」新型コロナ オミクロン株
3月1日 水際対策緩和 観光除く外国人の新規入国再開
3月17日 企業などでは“濃厚接触者の特定など必ずしも行う必要なし” 厚労省
3月22日 まん延防止等重点措置 すべての地域で解除 新型コロナ

<2022年4月~6月>
・4月6日 米CDC 新型コロナ “感染者の7割以上が「BA.2」と推定”
・4月10日 中国・上海 感染者数が最多更新 ゼロコロナ政策見直し求める声
4月10日 政府 一日当たりの入国者数上限 今日から1万人に引き上げ 
4月10日 コロナ 5月第1週には93%が「BA.2」系統に置き換わるか 感染研
4月11日 新型コロナウイルス “XE” 国内検疫で初確認 成田到着の女性
・4月19日 ブラジル 新型コロナ 緊急事態宣言を2年ぶりに解除
・4月21日 中国の専門家「ゼロコロナ緩和が必要」論文発表で波紋
・5月11日 WHO事務局長 “中国のゼロコロナ政策 持続可能と思えず”
5月23日 コロナ対処方針変更“屋外で会話ほぼない場合マスク必要なし”
6月1日 入国者数上限 きょうから2万人に 入国時検査など一部免除
・6月6日 中国 北京 飲食店での食事 6日から一部地域除いて解禁
6月10日 外国人観光客受け入れ 今日2年ぶり再開 当面添乗員付きツアー客限定
6月17日 政府 内閣感染症危機管理庁の設置決定
・6月28日 中国 海外からの入国者の隔離期間 7日間に短縮する方針を発表

<2022年7月~9月>
7月16日 新型コロナの感染者 11万675人 全国の一日の発表で過去最多
7月22日 濃厚接触者の待機期間 5日間に短縮 社会経済活動の維持のため
7月27日 感染確認 全国で20万人超 過去最多に 日常生活にも影響
・8月12日 米CDC コロナ感染者の接触者は隔離不要 高性能マスク着用に
8月19日 新型コロナ 全国感染者は過去最多26万1029人に 19道県で最多
9月1日 新型コロナ雇用調整助成金 10月以降 特例措置の上限引き下げへ
9月6日 岸田首相 コロナ療養期間短縮表明 症状あり7日間 無症状5日間
9月7日 新型コロナ水際対策 今日から緩和 空港利用客からは歓迎の声
9月8日 政府 新型コロナ対策めぐり 療養期間の短縮など決定
・9月15日 WHOテドロス事務局長 新型コロナ“終わりが視野に入ってきた”
9月20日 オミクロン株対応のコロナワクチン接種始まる
9月22日 徳島 阿波おどり 800人参加の踊り手などの4人に1人がコロナ感染

<2022年10月~12月>
9月26日 新型コロナ“感染者の全数把握簡略化”今日から全国一律開始
10月11日 水際対策きょうから大幅緩和 入国上限撤廃 個人旅行も解禁
10月19日 「感染症危険情報」全世界をレベル1に 渡航自粛要請国なくなる
11月17日 東京都 新型コロナ「第8波の入口に」警戒レベル1段引き上げ
11月20日 塩野義製薬の新型コロナ飲み薬の使用を承認 厚労省
・11月30日 中国 大規模抗議活動 大学はオンライン授業に 政府は学生警戒
・12月7日 中国政府 「ゼロコロナ」政策の規制 “さらに緩和” と発表
・12月18日 中国 医学生が死亡 「コロナ陽性の疑いも働かされた」との見方
・12月25日 中国政府 新型コロナの感染者数や死者数の情報 発表取りやめ
12月27日 政府は中国コロナ感染拡大で緊急水際措置 30日から実施へ
・12月27日 中国政府はコロナ水際対策見直し 1月8日から入国者の隔離措置撤廃へ
 
(3)テロ・誘拐
 
中東やアフリカでのテロ事件が相変わらず多い。イスラム国(IS)が徐々に台頭する兆しがある。2022年に日本人が標的となる、或いは犠牲となるテロ事件は発生しなかったが、11月13日、トルコ・イスタンブールの繁華街で起きた爆弾テロでは、日本人もよく立ち寄る場所であり、テロが起きた時の咄嗟の対応を身に着けておくことが大切である。

・1月15日 米テキサス州のシナゴーグで男が4人を人質にとり、イスラム過激派テロリスト受刑者の
      解放を要求。FBIが男を射殺し人質を無事救出
・1月20日 シリア北東部ハサカの刑務所をIS戦闘員200人以上が襲撃(2019年3月以来IS最大規模の
      作戦)。シリア民主軍(SDF)が応戦し鎮圧
・2月2日 米軍特殊部隊がシリア北西部イドリブ県でIS指導者クライシ氏を殺害
・4月26日 パキスタン・カラチの大学内にある孔子学院近くで自爆テロ、中国人3人含む4人死亡。分
      離独立派の「バルチ解放軍(BLA)」が犯行声明
・6月20日 マリ中部の村々がイスラム過激派テロに襲われ132人死亡
・8月1日 米軍がアルカイダの最高指導者アイマン・ザワヒリ容疑者を殺害
・9月5日 アフガニスタン・カブールのロシア大使館入口近くで自爆テロ。ロシア人2人含む6人死
      亡。ISが犯行声明
・10月26日 イラン・シラーズの聖廟でテロ攻撃があり、少なくとも15人死亡、40人が負傷
・11月13日 トルコ・イスタンブールの繁華街で爆弾テロ。少なくとも6人死亡、81人負傷。トルコ政
       府はPKKの犯行と非難
・12月7日 インドネシア・西ジャワ州の警察署で男が自爆し死亡、警察官3人が負傷。当局はテロリ
      ストの犯行とみている
・12月12日 アフガニスタン・カブールの中国系ホテルを武装組織が爆破、死傷者不明。ISが犯行声
       明
・12月23日 フランス・パリのクルド文化センター近くで男が発砲、在仏クルド人3人死亡、3人負傷
 
(4)世界重大リスク
 
・1月5日 カザフスタン各地で燃料高騰に抗議デモ、非常事態宣言。トカエフ大統領は集団安全保障条
      約機構(CESTO)に支援要請し、ロシア軍が関与
・1月24日 西アフリカのブルキナファソで軍事クーデター発生
・3月21日 中国昆明から広州に向かっていた中国東方航空のボーイング737-800型機が中国南部で墜
      落。乗客・乗員132人全員死亡(日本人の搭乗はなし)
・5月21日 WHOが、計12か国からサル痘ウイルスの症例が報告されていると発表
・7月8日 安倍晋三元首相が奈良で街頭演説中に暗殺される
・7月30日 ミャンマーで取材中の日本人ジャーナリスト1人逮捕
・8月3日 米国のペロシ下院議長が台湾訪問し、蔡英文総統と会談
・10月23日 中国共産党は1中総会で習近平総書記(国家主席)の3期目続投を正式決定
・12月29日 北朝鮮が2022年の1年間に過去最多の73発の弾道ミサイルを発射
 
 
【Ⅱ】2023年の展望
 
(1)ロシアのウクライナ侵攻
 
・ウクライナ侵略戦争は既に11ヶ月目に入っています。本来ならば、ロシア軍の侵攻数日後にはウクラ
 イナの首都キーウは制圧され、ゼレンスキー大統領は追放・拘束され、ヤヌコビッチ元大統領を新大
 統領とする親ロ派傀儡政権を樹立する予定でした。従い、ウクライナ侵略戦争の長期化・泥沼化は露
 プーチン大統領にとり大きな誤算となりました。 継戦能力の原動力は経済力と資金力です。ウクライ
 ナ戦争によりロシア経済は既に弱体化しており、戦費は枯渇しつつあります。2022年10月時点での
 露国家予算の2022年見通しと2023年計画は、それぞれ赤字1.32兆ルーブルと赤字2.92兆ルーブルと
 しているが、2022年11月後半から油価は急落しており、国家予算の大幅赤字増大が予想される。戦
 争は2023年内に収束の目途が立つであろうと推測します。
・米英中心にNATO軍の特殊部隊(20カ国以上が参加)がウクライナ軍を後方支援しており、内容は軍
 事情報、作戦指導、武器弾薬補給など多岐に渡り、ウクライナ軍が負けない体制構築が行われてい
 る。この支援が継続される限り、ウクライナ軍が勝利することは間違いないと推測します。
・プーチン大統領は2022年9月30日、「領土の一体性」が脅かされた場合に小規模な戦術核兵器の使用
 も辞さない考えを示した上で、ウクライナ東・南部4州の併合を宣言した。正気の沙汰でないウクラ
 イナ侵攻を2月24日に始めたプーチン氏であるが故に、核兵器の使用まではしないだろうとは断言で
 きない。もし、使用した場合はNATO軍の猛烈な反撃が予想される。核兵器攻撃を受けてもゼレンス
 キー大統領は降伏しないであろう。
 
(2)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、企業・団体のこれからの対策
 
① 世界には新型コロナ患者がまん延している国が少なからずある(2022年12月現在)。
② 新型コロナ予防の基本対策を着実に実施 ⇒マスク着用、手洗い、3密回避、換気、会食時は十分
  注意、ワクチン接種。
③ 政府、自治体の感染予防対策はタイムリーに、且つきめ細かく行われるので、指示、要請内容を把
  握してできるかぎり守る。外務省の感染症危険情報も参考にする。産業医、顧問医等に相談。
④ これまでの新型コロナ対策の経験、実績を踏まえて、BCP(事業継続計画)の適時見直し。
⑤ 他社との意見交換の機会を持ち参考にする。
 
(3)テロ・誘拐の動向
 
① イスラム過激派の活動がコロナ禍に乗じて再び活性化する兆候がある。
  ・一時は弱体化したISが、2020年春頃よりシリア、イラクでゲリラ的戦闘を行っており、2023年
   も攻勢が続く見込み。
  ・過激派グループはアフリカや南西アジア、東南アジアでも伸長している。SNS(交流サイト)を通
   じて新型コロナを「神の罰」などとする主張を繰り返し、過激思想を持つ、或いは生活苦に喘ぐ
   若者らに組織への加入を呼びかける。
   主な過激派組織として、ボコ・ハラム(ナイジェリア)、アルシャバブ(ソマリア)、IS中部ア
   フリカ州(モザンビーク)、アルカイダ(アフガニスタン、パキスタン、西アフリカ)、ジェ
   マ・イスラミア(東南アジア)等。
  ・欧米諸国を中心に、過激思想に染まってテロを行うホームグロウン型(自国育ち)やローンウル
   フ型(一匹狼)のテロも散発。
② 欧州、北米、オセアニアでは極右テロが目立ち増大が予想される。
③ 反政府組織の活動
  ・トルコでPKK(クルド労働者党)のテロが散発
  ・ミャンマー武装組織によるテロ
 
(4)世界情勢の主なリスク要因
 
① 2023年の注目選挙
  ・トルコ大統領選挙 (2023年6月)
  ・タイ下院総選挙(2023年5月までに)
  ・ミャンマー総選挙(日程未定)
② 米中対立
  ・中国による南シナ海、東シナ海における一方的な現状変更の試みと経済的圧力
  ・ウイグル、香港、チベット等の人権問題
③ 台湾有事の危機
④ 北朝鮮の核・ミサイル開発
⑤ イラン核合意の行方
⑥ ミャンマー、アフガニスタン、イエメン、リビア、エチオピア等の問題国
⑦ サイバー攻撃による国際緊張
 
 
【Ⅲ】NPO法人海外安全・危機管理の会(OSCMA)
 
① 当会は、2019年4月より、菅原 出(国際政治アナリスト)が代表理事に就任し、「人を育て社会
  に貢献する危機管理の総合シンクタンク」として、下記の4つの事業に取り組んでいる2022年1月
  ~12月の主な活動は以下の通り。
  1) 外交・安全保障プロジェクト
    ・外交・安全保障月例セミナーの開催
    ・外交・安全保障サマーセミナーの開催(9月)
  2) 海外安全・危機管理プロジェクト
    ・OSCMA危機管理情報のデイリー配信
    ・海外における安全対策、危機管理対策についてさまざまな講演
    ・企業・団体の危機管理者向けにオンライン個別相談会の開催
  3) 国際政治・外交安保を学べるオンラインアカデミー
    ・2022年10月開校、各分野の専門家が講座を担当
  4) 災害危機管理サバイバル教育プロジェクト
    ・72時間サバイバルコーチ養成講座(72時間サバイバル教育協会との共催で毎年11月に実
     施)
② 2023年も4つのプロジェクトの充実した活動に取り組みます。引き続き、当会のNPO活動へのご理
  解、ご指導、ご支援の程宜しくお願いいたします。
 

(備考)2022年日本人・日本企業に関連した主な事件・事故・災害等

・1月5日 カザフスタン各地で燃料高騰に抗議デモ、非常事態宣言
・2月24日 ロシア軍がウクライナに侵攻。プーチン大統領は「特別軍事作戦」の決行と発表。ゼレン
      スキー大統領は全土に戒厳令を敷きロシアと断交
・3月21日 中国昆明から広州に向かっていた中国東方航空のボーイング737-800型機が中国南部で墜
      落。乗客・乗員132人全員死亡(日本人の搭乗はなし)
・3月23日 ゼレンスキー大統領が日本の国会で演説、「制裁継続を訴え」
・5月21日 WHOが、計12か国からサル痘ウイルスの 症例が報告されていると発表
・6月10日 外国人観光客受け入れ 今日2年ぶり再開 当面添乗員付きツアー客限定
・7月30日 ミャンマーで取材中の日本人ジャーナリスト逮捕
・9月7日 新型コロナ水際対策 今日から緩和 空港利用客からは歓迎の声
・10月5日 日本政府は22年3月に一時的に閉鎖したウクライナの日本大使館の業務再開
・10月19日 「感染症危険情報」全世界をレベル1に 渡航自粛要請国なくなる
・11月13日 トルコ・イスタンブールの繁華街で爆弾テロ。少なくとも6人死亡、81人負傷。トルコ政
       府はPKKの犯行と非難
・12月7日 中国政府 「ゼロコロナ」政策の規制 “さらに緩和” と発表
・12月12日 アフガニスタン・カブールの中国系ホテルを武装組織が爆破、死傷者不明。ISが犯行声
       明
・12月23日 フランス・パリのクルド文化センター近くで男が発砲、在仏クルド人3人死亡、3人負傷
・12月27日 政府は中国コロナ感染拡大で緊急水際措置 30日から実施へ
・12月31日 首都キーウへのロシア軍のミサイル攻撃で、日本人記者1人も負傷

以 上

 


注:本ニュースは、海外に渡航・滞在される方が、ご自身の判断で安全を確保するための参考情報です。ニュースを許可なく転載することはご遠慮下さい。

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