インド:性犯罪の恐さ
2014年03月25日
3月21日のBBCテレビは、2013年8月にムンバイで発生した女性カメラマンへの暴行(集団レイプ)事件の犯人4人に終身刑の判決が出たことを伝えていた。WEB上では、各国有力紙のサイトがAFP配信を転載する形で伝えているのが目立つ。
以下のURLはガーディアン(英)のものである。
http://www.theguardian.com/world/2014/mar/20/four-guilty-gang-rape-mumbai
インドにおける性犯罪の問題は、これまでベンガル語の芸術・社会派映画ばかりでなく、娯楽性の高いヒンディー語映画にもたびたび登場したが、メインテーマとなることはなく、正面からの批判は長く抑制されていたように思える。件数の多さや残虐さは結果的に隠れていた。
ところが、2012年12月にデリーで起きたバスに乗車中の女子学生への集団レイプ殺人事件は詳しく報道された。被害者が緊急治療の為シンガポールに搬送された(その後同地で亡くなった)ことから、国際的にも注目され、これがインドで反レイプの運動が盛んに行なわれるキッカケになった。世論が政治を動かし、女性保護を強化する法律もできた。
この種の事件が多いことの背景に、インドの根深い因習や女性差別感情、社会事情(カーストや貧困から結婚を諦めている若者が少なくないとか、警察や裁判所の事件への関心の低さなど)があるとされる。
一般的に男尊女卑感情が蔓延しており、被害者まで不当に差別してしまうこともある。カースト制はヒンドゥー教徒だけのものと思いがちだが、インドではムスリムにも実質的にカースト(高貴な身分のイスラム教徒とそうではないイスラム教徒など)が存在する。
筆者は、以前パキスタン(文化的にはインドとほぼ同じ)のラホール市で観光中、1人の若い女性と会話したことから、それを見ていた変な男につきまとわれた経験がある。その男は私を批判すると同時に、「あれは性悪女、公的な場所で外国人と話した」などと女性をも罵っていた。結局一喝して追い払ったが、異様なプレッシャー’を感じた。
女性渡航者の安全対策としては、不用意に単独で外出しない、服装に気をつけて肌を露わにしないようにする、男性の同行者が居ても乗合いの公共交通機関は利用しない、辺鄙な場所に行かない、街角で男たちがたむろしているような場所には近づかないなどが上げられる。
インドファンの筆者には辛い注意喚起である。しかし、信仰・哲学・芸術・ヨーガ・数学・IT技術などに代表されるインドの平和で善良で優秀な部分を評価するならば、なおさらインド社会の暗部も見過ごさないようにして、被害者にならない注意も必要である。日本人の被害者も出ている。新しい法律の抑止効果の程は未だ分からない。見極めはこれからである。
関連情報を掲載するサイトは多いが、以下がまとまっており、参考になる。
l Rape in India (Wikipedia):
http://en.wikipedia.org/wiki/Rape_in_India (竹本 和夫)
注:本ニュースは、海外に渡航・滞在される方が、ご自身の判断で安全を確保するための参考情報です。ニュースを許可なく転載することはご遠慮下さい。