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トルコ:共和国史上最悪のテロ被害

2015年10月15日

トルコの首都アンカラの中心部で10月10日(土)午前10時5分頃(現地時間)、自爆テロ犯2人による連続爆破テロが発生。少なくとも99人が死亡、240人以上が負傷した。現場はアンカラ中央駅正面の交差点付近で、左派系団体が主催する、政府と非合法武装組織クルド労働者党(PKK)との和平を訴える集会の参加者集合場所だった。当時、約1万4千人が集まっていたとされる。犯行声明は出ていない。

トルコのダウトオール首相は、10日、「IS(イスラム国)、PKK、或は極左過激派組織DHKP/C(革命人民解放党/戦線)のいずれかの関与が疑われると」発言。また、14日には、「ISによる犯行が有力視されるが、PKKが関与した可能性もある」と主張した。一方、トルコ検察当局は、ISの犯行と見て捜査に当たっているとの報道もある。
 
今年に入り、トルコでテロが頻発している。①PKKによると見られる主に警察及び軍関係施設等を狙ったテロが、イスタンブール市内やトルコ南東部等において発生。例として、7月28日、PKKによる南東部シュルナク県の軍警察襲撃事件が発生し、報復としてトルコ政府はPKK関連の3カ所に対して空爆を実施したが、その後8月だけでもシュルナク県で19件のテロが発生した。②DHKP/Cによると見られるテロは、2015年1月1日、イスタンブール市内のドルマバフチェ宮殿入口でのテロ未遂、同6日に観光地のスルタンアフメット地区の交番付近において自爆テロ、3月31日にシシリ区内の裁判所における銃撃立て籠もり、4月1日にファーティヒ区内の県警本部前における銃乱射、8月10日にイスタンブール市北部サリエル地区の米国総領事館に対する発砲等、主にイスタンブールで起きている。③シリア国境に近い南部スルチュで、7月20日にISによると見られるクルド人を狙った自爆テロが起きて、32人が死亡、100人以上が負傷した。7月23日には南部キリス県で国境警備のトルコ軍兵士がISに銃撃され、1人が死亡、2人が負傷した。

7月下旬、トルコ政府は米軍がISに対する空爆でトルコ南部のインジルリク空軍基地を使用することを容認した。また、トルコ空軍は、7月24日、IS及びイラク北部、トルコ国内のPKKに対する空爆を開始した。

トルコでは6月の総選挙結果を受けた連立政権樹立の交渉が不調に終わり、11月1日(日)に再び総選挙が予定されている。ダウトオール首相が党首の与党公正発展党(AKP)が過半数の議席回復を狙うが、前回選挙で躍進したクルド系の国民民主主義党(HDP)の票の行方が焦点。首相はPKK批判を強めることにより、HDP人気の減少を図ろうとしているようだ。

今回のアンカラでのテロの目的は不明であるが、総選挙への影響や国内の混乱を狙ったものではないかと推測される。

アンカラやイスタンブール等で、テロを防げなかったエルドアン政権に対して、数千人規模の抗議デモが続いており、AKPが過半数を確保できるか微妙な情勢にある。
トルコでは今後も、テロや反政府デモ、集会等が多発することが予想される。

トルコ渡航・滞在に当たっては、外務省がトルコ各地の危険状況に対応した危険情報(以下)を発出しているので、ご参照下さい。
http://www2.anzen.mofa.go.jp/info/pchazardspecificinfo.asp?id=052&infocode=2015T112#ad-image-0

テロがいつどこで起きるかを予測することは困難ですが、①最新の現地情報を入手するように努める。②デモや集会等には近づかない。③テロの標的となりやすい場所(政府・軍・警察関連施設、宗教施設、欧米人がよく利用する施設等)や大勢の人が集まる場所(公共交通機関,観光施設,ホテル、レストラン,ショッピングマーケット等)を訪れる際には,周囲の状況に注意を払い,不審な状況を察知したら速やかにその場を離れる。等の方法により、テロのリスクを減らすことができるので、十分にご注意下さい。 (長谷川 善郎)


注:本ニュースは、海外に渡航・滞在される方が、ご自身の判断で安全を確保するための参考情報です。ニュースを許可なく転載することはご遠慮下さい。

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