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バングラデシュ:ダッカ人質事件と今後の企業テロ対策

2016年07月11日

7月1日(金)21:30頃(現地時間)、バングラデシュの首都ダッカ市内の外国人が多く利用する高級レストランを武装集団(実行犯5人)が襲撃し、30人以上を人質に取り立て籠もった。解放交渉が進まず、治安部隊は翌朝の07:40頃に突入。5人を射殺し人質を解放したが、事件では日本人7人を含む23人が犠牲になった(日本人7人、イタリア人9人、米国人1人、インド人1人、バングラデッシュ人は警察官2人を含む5人)。多数が負傷し、日本人1人も重傷で救出された。日本から出張中の8人の技術者も被害に遭うという痛ましいテロ事件が起きた。7月3日、インターネット上に、「十字軍諸国の国民を攻撃した」旨の「イスラム国(IS)バングラデシュ支部」を名乗る犯行声明が出された。

バングラデシュでは、過去にイスラム過激派の「ジャマートゥル・ムジャヒディン・バングラデシュ(JMB)や「ハルカトゥル・ジハーディ・イスラミ・バングラデシュ(HuJI-B)」の活動が見られた。2005年には、国内の多数地点で同時多発爆弾テロが発生し2人死亡、150人以上が負傷した。政府はJMBの犯行と断定し、イスラム過激派組織の取り締まりを強化して封じ込めに成功したが、2015年秋頃から過激派組織の活動が目立ち始め、手口も過激になった。2015年9月:ダッカ中心部でイタリア人が武装した男に射殺される(ISが犯行声明)。10月:バングラデシュ北部で農業アドバイザーの日本人が武装した男数人に殺害される(ISが犯行声明)。10月: ダッカで出版関係者が武装集団に殺害される(インド亜大陸のアルカイダが犯行声明)。11月:ディナジプールでイタリア人神父襲撃事件(ISが犯行声明)。2016年2月:バングラデシュ北部のヒンズー教寺院で僧侶が2人組に殺害される(ISが犯行声明)。4月:ダッカの大学生(世俗主義的ブロガー)が武装した3人組に殺害される(インド亜大陸のアルカイダが犯行声明)。4月:ラジュシャヒ市の国立大学で教授が武装した男に殺害される(ISが犯行声明)。6月:政府がイスラム過激派一斉取り締まりを強行(多数の野党関係者を含む1.1万人を拘束)。6月:バングラデシュ北部パブナ地区でヒンズー教徒の僧侶が武装した男に殺害される(イスラム組織の犯行)等テロが多発。一連の外国人テロを踏まえて、外務省は2015年10月4日付けで、バングラデシュの危険情報をレベル2(不要不急の渡航は止めてください)に引き上げ、11月20日付けスポット情報では「外国人襲撃事件の発生に伴う注意喚起」を発出した。また、2016年5月30日付け広域情報では、イスラム過激派組織がラマダン期間中のテロを呼びかける声明を出しているとして警戒を呼びかけた。

今回のテロ事件について、報道によれば、①実行犯の5人はいずれも10代後半から20代の若者で、一部は比較的裕福な家庭の出身で、高等教育を受けている。②外国人と非イスラム教徒を狙って殺害し、イスラム教徒は原則解放した。③ISバングラデシュ支部が犯行声明を出したが、バングラデシュのカーン内相は国内の過激派の犯行であるとしてIS犯行を認めていない。④犯行中に犯人からの要求は特になかった。⑤テロは計画されて周到に準備がなされた。バングラデシュでは、銃や爆発物を入手するのは比較的困難なので、背後に協力者がいると推測される。但し、実行犯がIS本部の訓練を受けた形跡は今のところ見当たらない。
バングラデシュでは政治デモやハルタル(ゼネスト)の参加者が時に暴徒化することで知られるが、過激派テロについては、これまで少人数によって行われていたので、今回の大規模テロは、バングラデシュ国内及び国際社会に大きな衝撃を与えた。バングラデシュでは、大学を卒業してもよい職に就ける若者は限られており、政府や社会への不満から(インターネット等を通じて)イスラム過激思想の流行に感化された若者も少なくない。また、外国人戦闘員としてシリアに渡航したバングラデシュ人も少なからずいることから、国内にはISシンパも相当数いることが考えられる。 
7月6日付け現地紙ダッカ・トリビューン(電子版)は、ISが欧米人を標的にバングラデシュで新たなテロを起こすと予告する映像を公開したと伝えている。

今回のテロ事件に際し、現地進出の日本企業では、安否の確認、当分の間現地への出張を控える、夜間は外出しない、できるだけ外出を控える等の措置を取ったと聞く。
テロは今後も起きる可能性がある。以下もご参考に安全対策、危機管理対策の強化に取り組んで頂きたい。
①安全担当者を任命して社員の安全確保に努める⇒ 駐在員、出張者等に注意を喚起する際、実際に注
 意が行き届いているかにも気を配る。
②社員は、最新の治安情勢について情報を収集する⇒ 外務省の「たびレジ」、在外公館情報、メディ
 ア、危機管理会社情報等を利用。
・外出時は周囲に特段の注意を払う。テロの標的となり易い欧米関連施設、政府・治安関連施設、宗教
 施設、集会・デモ等にはできる限り近づかない。
・外国人が多く利用するホテル,レストラン、空港等はリスクがあるので十分に注意する。
 詳しくは外務省の危険情報を参照。
 http://www2.anzen.mofa.go.jp/info/pchazardspecificinfo.asp?
 id=012&infocode=2016T117#ad-image-0

③安全の研修を行う⇒ 駐在員、出張員、現地社員、外国人社員等を対象に。
④有事を想定した備えを念頭に、緊急事態に対する訓練に取り組む⇒ 当会主催の講演会、研究 会等
 でも(簡単な)訓練を行っています。
⑤人、施設、組織の安全管理には、PDCA(Plan-Do-Check-Action)手法を用いて、有効的且つ 継続的
 に強化を図る。
(長谷川 善郎)


注:本ニュースは、海外に渡航・滞在される方が、ご自身の判断で安全を確保するための参考情報です。ニュースを許可なく転載することはご遠慮下さい。

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