海外安全・危機管理 ― 2024年の回顧と展望
2025年01月06日
NPO法人海外安全・危機管理の会
専務理事 長谷川善郎
現在の世界は、武力紛争が多い状態にあります。以前から深刻化しているが2024年も高止まりだった。犠牲者が多いロシア・ウクライナ戦争やガザ危機を中心とする中東の一連の戦争、そして東部アフリカのソマリアから、西アフリカのサヘル地域に至るまでの帯状の地域で、紛争が多発している。
北朝鮮は10月、ロシアに派兵。シリアのアサド政権は12月に崩壊し、ロシアはシリア内の軍事拠点の維持に奔走している。
2024年は世界的に選挙イヤーといわれ、世界人口の半分以上を占める76か国で選挙が行われ、過去最多を記録。大半の民主主義国で政権与党が退潮した。SNSの浸透で不確かな情報が容易に拡散し、過激な政治勢力が支持を伸ばした。韓国では12月3日、戒厳令が宣言されて政治的混乱が続く。
中国、ロシアなどの強権国家は混迷する民主主義諸国の足元を見ている。グローバルサウスの台頭も世界秩序の構図を激変させており、中露の影響力が拡大している。
24年最大の政治イベントであった米大統領選挙もその例に漏れず、現職・与党の民主党に厳しい結果となり、共和党大統領候補であるトランプ氏が第47代大統領として返り咲くことが決まった。25年はトランプ次期大統領が1月20日に就任を予定しており、国内対立を煽る政治手法や米国ファーストの外交政策により、米国政治の機能不全と社会の分断が深まることが懸念される。
また、各国政治の混乱が世界経済の主要なリスクになるだろう。民主主義のあり方が一段と問われる年になる。
25年はロシア・ウクライナ戦争が継続か、停戦かの重要な分岐点となることが見込まれる。
【Ⅰ】2024年の回顧
(1)ロシア・ウクライナ戦争
ロシアのプーチン大統領が2022年2月24日に始めたいわゆる「特別軍事作戦」は、3年目に突入した。2024年の1年で戦線はどう動いたか。
ウクライナ軍はこの1年、苦戦を強いられて兵力は消耗し、ウクライナ東部のドンバス地方ではロシア軍が攻勢に出て、支配地域の拡大を加速させている。ウクライナ領内で最も大きく前線が動いたのは、ドネツク州の中部と南部だ。ロシア軍は激しい攻防戦の末、2月に同州の工業都市アウディーイウカを陥落させると、以後は着実に支配地域を広げた。 6、7月頃から、この流れが顕著になり、ロシアが毎月のように支配地域を拡大するようになった。ウクライナ軍は11月に最も多くの陣地を失った。12月半ばにはロシア軍はドネツク州の要衝ポクロフスクまで数キロの地点まで迫った。プーチンはドネツク州全域の制圧を狙っているが、そのためにはポクロフスクの陥落が鍵を握る 米シンクタンク・戦争研究所(ISW)によると、ロシアが支配下に置いたとみられるルハンシク州の支配地域は州境を越えて、ハルキウ州クピャンスクの南とドネツク州バフムートの西にまで及んでいる。
最も重要なのはドネツク州における戦闘で、ロシア軍はドネツク州における夏の攻勢に加え、その北のハルキウ州にも再び軍を進め、南のザポリージャとヘルソン両州でも攻撃を仕掛けた。ISWによると、ザポリージャ州でロシア軍が制圧したと主張している地域は、実際にはわずかしか拡大しておらず、とりわけマラトクマチカの南とマリウポリの北では、ウクライナ軍が善戦している。ISWは全体的に見ると、2024年は2023年より大きく戦況が動いたが、大半は8月から12月までの動きで、年の前半はおおむね膠着状態にあったと分析している。
ウクライナがロシア西部のクルスク州への越境攻撃に踏み切ったのは8月6日のことで、当初ロシア側の防御はもたついたが、その後北朝鮮の兵士を集中的に投入し、今ではウクライナ軍が当初占拠した1200平方キロのかなりの部分を奪還している。
トランプが再びアメリカの大統領に就任する2025年1月20日を期限として、ロシアはドネツクの完全占領とクルスクの完全奪還を目指して猛攻を仕掛けている。トランプが停戦の圧力をかけてきたときに少しでも交渉を有利にするためである。
(2024年の経過)
・1月13日 英首相がウクライナへの4600億円規模の軍事支援を表明
・1月15日 ウクライナ軍がアゾフ海上空でロシア軍の空中警戒管制機と空中指揮機を撃墜
・1月23日 ウクライナの港からの昨年12月の農産物輸出が軍事侵攻後で最大に
・1月24日 容赦ないロシアの「肉弾攻撃」は、数で劣るウクライナ軍をすり減らす
・1月25日 米国のウクライナのための追加予算が承認されず軍事支援はほぼ停止状態
・2月1日 EU臨時首脳会議はウクライナに今後4年間で最大500億ユーロの支援金供出に合意
・2月6日 ウクライナ軍がドローンを専門とする「無人システム部隊」を創設
・2月8日 ゼレンスキー大統領はザルジニー総司令官を解任し、後任にシルスキー陸軍司令官を任命
・2月14日 ウクライナがクリミア沖でロシアの大型揚陸艦を撃沈
・2月14日 日本政府がウクライナ復興支援に携わる企業に渡航制限緩和を検討
・2月19日 ウクライナ軍が東部のアウディーイウカから撤退
・2月19日 ウクライナ経済復興推進会議が日本経団連で開催
・2月26日 スウェーデンのNATO加盟が承認
・2月27日 マクロン仏大統領がウクライナへの西側部隊派遣「排除せず」と発言
・2月29日 プーチン大統領が年次教書演説で「ロシア軍が攻勢」と戦果を強調
・3月12日 ゼレンスキー大統領が軍の弾薬不足に危機感、軍事支援の継続訴え
・3月12日 ロシアが、外国の代理人が広告を掲載することを禁止
・3月17日 ロシア大統領選、プーチン大統領が90%近い得票率で圧勝
・3月22日 ロシア・モスクワ郊外のクロクス・シティホールでテロ事件発生143人死亡、182人負傷
・3月31日 ウクライナは発電所などにロシアの攻撃相次ぎ深刻な電力不足も
・4月3日 ウクライナ 動員の対象年齢引き下げへ
・4月24日 米上院がウクライナ支援の608億ドル(9.3兆円)の緊急予算案を可決
・4月25日 米がウクライナに射程の長いミサイルATACMS供与(但しウクライナ国内で使用)
・4月27日 米国務長官が対ロ支援で中国に警告、制裁示唆
・4月29日 ウクライナ 東部の前線で状況悪化、一部で部隊後退
・5月2日 米、ロシアがウクライナ軍に化学兵器使用と断定、禁止条約違反
・5月13日 プーチン大統領が国防相を交代、後任に文民のベロウソフ氏
・5月16日 プーチン大統領、5月16日から中国公式訪問、首脳会談
・5月16日 中国 ウクライナ侵攻後ロシアへの軍事転用可能物資の輸出急増
・6月11日 日本とウクライナ官民による会議で復旧復興に向けた連携確認
・6月13日 G7サミット イタリアで開催、凍結したロシア資産の活用を協議
・6月15日 プーチン氏戦争終結に向けた条件提示 ウクライナは拒否「完全な茶番」
・6月15日 ウクライナ和平のための「世界平和サミット」がスイスで開催
・6月17日 ウクライナ 受刑者2750人以上を兵士として戦場へ
・6月19日 プーチン大統領が北朝鮮訪問、包括的戦略パートナーシップ条約を締結
・6月19日 ウクライナ改正動員法で義務化の個人情報登録200万人超す
・6月26日 NATO次期事務総長にオランダのルッテ首相、10月就任
・7月11日 NATO首脳会議、ウクライナへの揺るぎない支援を宣言
・8月1日 米製F16戦闘機ウクライナに初めて到着
・8月3日 ウクライナ軍、ロシア潜水艦をクリミア半島で撃沈
・8月6日 ウクライナ軍がロシア西部クルスク州に越境作戦
・8月28日 ゼレンスキー大 統領、戦争終結計画 米に提示へ
・9月9日 人員・装備で劣るウクライナ軍、士気の低下や脱走も悩みの種に
・9月25日 プーチン大統領 核兵器使用条件変更を提案 使用する可能性を示唆
・9月28日 トランプ氏 ゼレンスキー大統領とニューヨークで会談「選挙勝利で和平実現」
・10月18日 北朝鮮が1万2千人の兵力を ロシアに派遣決定
・11月4日 ウクライナ軍、激しい攻勢に直面 ロシアは東部で集落を支配下に
・11月18日 米、ウクライナに長距離ミサイルATACMS使用許可、近くロシア攻撃
・11月19日 バルト海で海底ケーブル2本が切断、ハイブリット戦争の懸念高まる
・11月21日 プーチン大統領が新型の極超音速中距離弾道ミサイル「オレシュニク」を初めてウクライ
ナに発射したと発言
・11月27日 トランプ氏がキース・ケロッグ退役陸軍中将を大統領補佐官兼ウクライナ・ロシア担当特
使に指名すると発表
・12月8日 トランプ氏がゼレンスキー大統領、マクロン仏大統領とパリで会談
・12月9日 トランプ氏 ウクライナ支援縮小に言及「早期終戦を」
・12月9日 ゼレンスキー大統領がロシア軍事侵攻以降 ウクライナ軍死者4万3000人と発言
・12月24日 ゼレンスキー大統領 北朝鮮兵士の死傷者は3000人以上と指摘
(2)イスラエル・パレスチナ戦争
パレスチナのイスラム組織ハマスがイスラエル南部で奇襲攻撃を仕掛け、1200人が死亡、240人が人質に取られた2023年10月7日以来、イスラエル軍はパレスチナ自治区ガザを空爆し、同領土への援助の流れを制限してきた。
2024年、イスラエルはガザでの戦闘を激化させた。並行して、ハマスに連帯しイスラエルへの攻撃を繰り返したレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラや、イエメンの武装組織フーシ派に対する軍事作戦も強化。ヒズボラとは24年11月に停戦で合意したが、ハマスやフーシ派との衝突は続いている。イスラエルは、ハマスの最高指導者を立て続けに殺害し、戦力を低下させた。ガザでは4万5000人以上が死亡し、街は廃虚となった。それでも停戦に至らないのは、「ハマス壊滅」を目標とするイスラエルと、組織の存続を前提に恒久停戦を求めるハマスとの溝が埋まらないためである。
イスラエルの標的はハマス最高幹部にも及んだ。7月にはイランでハニヤ政治局長が暗殺され、10月にはその後継者であるシンワル氏も殺害された。また、ハマス側は確認していないが、イスラエルは7月、ハマスの軍事部門「カッサム旅団」のデイフ司令官を殺害したと主張している。カリスマ的指導者の喪失は、ハマスの求心力の低下につながる可能性がある。ガザにおける停戦や人質解放の交渉は、米国、エジプト、カタールの仲介で進められていたが、イスラエル・ ハマス双方に妥協する姿勢は見られない。10月末にはカタールの首都ドーハで停戦交渉が行われたが、まとまらなかった。そのため、カタールは、11月になって調停の役割を停止すると発表した(その後、調停役を再開)。なお、これと関係して、業を煮やした米国がカタールに対し、ハマスをドーハから追い出すよう圧力をかけたとの報道がある。カタール側は、ハマスのドーハからの出国を認めたものの、これが恒久的なものであることについては否定している。イスラエルのネタニヤフ政権は妥協する素振りを示しながら、実際には停戦を受け入れる可能性は低いと見られた。
レバノンのシーア派武装組織ヒズボラは、紛争勃発直後から、ハマス支援を名目に、イスラエルに多数のロケット弾を撃ち込みはじめた。イスラエルは、二正面作戦を十分想定 していたと考えられ、ガザでの攻撃を継続しながら、レバノン南部への攻撃を激化させ、さらに首都ベイルートなどへも攻撃範囲を広げていった。とくに9月以降、イスラエルのレバノン攻撃は新たな段階に入った。9月17日と18日、ヒズボラがメンバー等に連絡用に配布していたポケベルと無線機が一斉に爆発、42人が死亡し、3,500人以上が負傷した。さらに、9月27日にはイスラエル軍が、ベイルート南部でヒズボラ最高指導者のナスララ師らを殺害し、そして、10月1日にはイスラエル軍はレバノン南部で限定的な地上作戦を開始。イスラエル軍の攻勢でヒズボラはイスラエルと11月27日、停戦合意したが、ハマスとフーシ派は戦闘を継続している。
(2024年の経過)
・1月8日 ネタニアフ首相がハマスのせん滅を目指す姿勢強調
・1月9日 ハマス、イスラエルとの戦闘で北朝鮮製の武器使用 韓国情報機関情報
・1月12日 米英軍 イエメンのフーシ派拠点攻撃 フーシ派側5人死亡
・1月15日 イランはイラク・クルデスタンにあるイスラエル情報機関オフィスを攻撃
・1月17日 紅海周辺の緊張高まる 日本の海運各社航行を一時取り止めへ
・1月17日 対レバノン国境線で戦争勃発の可能性増大 イスラエル軍参謀総長
・1月21日 イラクの米軍駐留基地に攻撃 ガザ衝突を巡る応酬で緊張
・1月22日 イスラエル ガザ地区南部へ攻撃拡大
・1月26日 国際司法裁判所がイスラエルに暫定措置命じるも、作戦即時停止は命じず
・1月29日 国連機関スタッフの攻撃関与疑い 日本もUNRWAへの資金拠出停止
・1月29日 米軍ヨルダンの拠点が無人機攻撃を受け3人死亡25人けが
・2月5日 イスラエル 反政府デモに数千人、人質解放交渉巡り不満募る
・2月29日 ガザ保健当局は、ガザ北部で食糧支援物資の輸送車両に殺到した住民にイスラエル軍が発
砲し、120人以上が死亡したと発表
・3月6日 トランプ氏、イスラエル支持を明言 TVインタビューで
・3月上旬 数か国がガザに支援物資を空中投下し、同15日には、キプロスからの「海上回廊」を利用
した最初の支援船が到着した
・4月1日 在シリアのイラン大使館がイスラエルの攻撃でイラン革命防衛隊の司令官ら7人が殺害さ
れる
・4月1日 食料支援を行っていた米慈善団体「ワールド・セントラル・キッチン」の職員ら7人がイ
スラエル軍の空爆で死亡
・4月13日 イランがイスラエル各地に無人機やミサイルによる大規模報復攻撃を行う
・4月17日 イスラエル軍 レバノン空爆でヒズボラ司令官ら3人を殺害
・5月6日 イスラエル、国内の衛星放送局アルジャジーラ事業所閉鎖、煽動を非難
・5月7日 イスラエル軍はガザ地区最南端ラファへの地上侵攻を開始
・5月27日 上川外相 イスラエル外相に国際司法裁判所の暫定措置命令履行求める
・6月17日 イスラエル、ヨルダン川西岸での入植「強化」検討
・7月13日 イスラエル ガザ地区南部ハンユニスへの攻撃でハマス軍事部門トップ、・ダイフ氏を殺
害
・7月20日 イスラエルは、フーシ派がテルアビブを無人機で攻撃し、死者が出たことへの報復として
イエメンを攻撃。フーシ派は、ガザへの連帯を示し、紅海やアデン湾を航行する船舶への
攻撃を繰り返す。
・7月20日 イスラエルはヒズボラの精鋭「ラドワン部隊」を率いていた司令官を含む、16人の戦闘員
を殺害
・7月27日 イスラエルが占領するゴラン高原でロケット弾攻撃によりイスラエルの若者12人死亡。イ
スラエルは報復を宣言
・7月30日 イスラエル軍がヒズボラの軍事部門最高幹部のシュクル氏を殺害
・7月31日 ハマスの最高幹部ハニヤ政治局長がテヘランで暗殺された
・7月31日 イスラエルのベイルート攻撃で中東の緊張高まる
・8月7日 ハマス、新たな政治局長にシンワル氏を指名 昨年の奇襲立案した一人
・8月16日 米国は新たな停戦案を提示したが、ハマスは受け入れ拒否。エジプト、カタールが仲介
し、22日に交渉を再開した
・8月25日 ヒズボラ イスラエルへの大規模報復攻撃の開始声明
・8月28日 イスラエルは占領下のヨルダン川西岸北部で「対テロ作戦」を開始
・9月1日 イスラエル、レバノン南部を空爆 ヒズボラ精鋭部隊の司令官を殺害
・9月18日 レバノンでポケベル爆発 死者40人、負傷者3400人 イスラエルが爆発物を埋め込む
・9月20日 イスラエル軍がレバノンのベイルートを空爆。ヒズボラの精鋭「ラドワン」部隊を率いて
いた司令官を含む、16人の戦闘員を殺害
・9月28日 ヒズボラ最高指導者 ナスララ師を殺害 イスラエル軍発表
・10月1日 イスラエル、イランからナスララ師とハニヤ氏の殺害に対する報復として200発近くのミ
サイル攻撃を受ける
・10月1日 イスラエル軍 レバノン地上侵攻を開始
・10月19日 ハマス シンワル最高幹部の死亡を認める
・10月26日 イスラエル軍がイラン国内を攻撃、ミサイル製造能力にダメージ
・10月29日 ヒズボラ、最高指導者後任にナンバー2のカセム師
・11月4日 イスラエル、国連にUNRWAとの関係解消を通告
・11月5日 ネタニアフ首相はガッツ国防相を解任、後任はカッツ外相
・11月27日 イスラエルとヒズボラの停戦合意
・12月8日 シリア・アサド政権崩壊
(3)テロ・誘拐
中東や南西アジア、アフリカ、欧州でのテロ事件が相変わらず多い。イスラム国(IS)が徐々に台頭する兆しがある。2024年は日本人が標的にされた、或いは犠牲となるテロ事件や誘拐は起きなかったが、中国で日本人学校の男児が襲われる事件が2件相次いだ。
イスラエル・パレスチナ戦争を受け、イスラム過激派組織がユダヤ人や欧米人に対する「ジハード(聖戦)」を呼びかけている。組織的なテロだけでなく、こうした呼びかけに賛同した「ローンウルフ(単独犯)」型の事件が起きる可能性もあり、各国が警戒を強めている。
・1月3日 4年前に殺害されたイランのソレイマニ司令官の追悼式典で爆発95人死亡
・1月29日 トルコ・イスタンブール教会をで2人組が襲撃、1人死亡。ISが犯行声明
・2月16日 ロシア反政権派指導者ナワリヌイ氏の暗殺
・3月4日 西アフリカのブルキナファソで3つの村が襲撃され約170人死亡
・3月22日 ロシア・モスクワ郊外のコンサートホールでイスラム国(IS)武装集団が観客を銃撃、
143人死亡、182人以上負傷
・3月27日 パキスタンで中国人狙った自爆テロ、中国人技術者ら6人死亡
・4月19日 パキスタン・カラチで日系企業駐在員5人が乗った車列に自爆攻撃 3人負傷
・5月15日 スロバキアのフィツォ首相が男に銃撃され重傷
・6月7日 デンマークのフレデリクセン首相が男に襲われる。被害なし
・6月10日 中国吉林省の公園でアメリカ人の大学講師4人が男に刃物で刺され負傷
・6月24日 中国蘇州で日本人学校のバスが襲われ親子ら3人死傷
・6月29日 ナイジェリア・ボルノ州で爆弾が相次いで爆発。18人死亡、48人負傷
・7月11日 ウクライナに兵器を供給するドイツ防衛企業大手「ラインメタル」の最高経営責任者の暗
殺未遂
・7月13日 米大統領選候補のトランプ氏がペンシルベニア州バトラーで銃撃され負傷
・7月26日 パリ・オリンピック控えるフランスで高速鉄道TGVを狙った同時多発的な放火事件
・7月29日 イスラエル選手に殺害予告、パリ五輪
・8月4日 ソマリアのビーチで自爆テロ 市民30人死亡
・8月27日 パキスタン南西部武装集団の襲撃相次ぎ30人以上死亡
・9月2日 トルコ・イズミールで米海兵隊員2人が反米青年組織メンバーから暴行受ける
・9月18日 中国深圳市で日本人学校の男児が刺殺される
・10月6日 パキスタン・カラチ空港付近で爆発 中国人2人死亡
・10月20日 ミャンマーの中国大使館で爆発
・10月23日 スリランカでテロの恐れ、観光地からの即時撤退を米とイスラエルが勧告
・11月9日 パキスタン・クエッタ鉄道駅で自爆テロ、26人死亡 反政府過激派が犯行声明
・12月11日 豪州で反ユダヤの襲撃相次ぐ、シドニーで放火や落書き
・12月17日 ロシア・モスクワで爆発 ロシア軍の生物化学兵器部隊トップら2人死亡
・12月20日 ドイツ・マクデブルクのクリスマス市に車が突っ込み5人死亡、約200人負傷、容疑者は
「反イスラム」のサウジ出身の医師
(4)世界重大リスク
・1月7日 バングラデシュ総選挙、与党勝利で政権続投へ 野党不在で低投票率に
・1月13日 台湾総統選 頼清徳氏が当選
・1月15日 金正恩氏 韓国との平和統一を破棄
・2月6日 米首都で急増する凶悪事件、議員や市民が犠牲
・2月8日 パキスタン総選挙、野党系が最多議席獲得するも過半数に及ばず
・2月9日 習主席とプーチン大統領が電話会談、さらなる関係強化を確認
・2月14日 インドネシア大統領選挙 プラボウォ国防相が勝利、10月20日大統領就任
・2月27日 中国、国家秘密保護法を改正
・3月3日 ウクライナ支援協議内容がロシアに漏洩、シュルツ独政権に激震
・3月7日 スウェーデンNATOに加盟
・3月13日 EU議会がAI法制定
・3月16日 ニジェール軍政 米との軍事協定を破棄「極めて不公平」
・3月17日 ロシア大統領選挙、プーチン大統領が圧勝
・3月21日 米司法省独禁法違反でアップルを提訴
・3月23日 香港、スパイ行為取り締まる「国家安全条例」を施行
・3月31日 トルコ統一地方選挙、野党が躍進
・4月3日 台湾東部沖マグニチュード7.7地震発生、13名死亡、1,146名負傷
・4月10日 韓国総選挙 与党「国民の力」が惨敗
・4月21日 エクアドル治安対策強化を問う国民投票 軍の役割拡大など承認
・5月15日 シンガポール初の庶民派首相、ローレンス・ウォン氏の政権誕生
・5月16日 プーチン大統領と習近平主席が北京で首脳会談
・5月18日 サウジで初の水着ショ― 「歴史的な瞬間」
・5月19日 イラン ライシ大統領が死亡 搭乗ヘリ墜落
・5月21日 ニューカレドニアで先住民の暴動、豪とNZが救出機派遣
・5月23日 中国軍が台湾周辺で陸海空の合同軍事演習
・5月27日 日中韓の首脳会議ソウルで開催
・5月29日 南アフリカ総選挙 連立政権樹立で合意しラマポーザ大統領続投
・6月2日 メキシコ大統領選挙 与党のシェインバウム氏が勝利
・6月4日 インド総選挙の開票結果、与党・インド人民党が大幅議席減 連立政権樹立しモディ首相
続投
・6月6日~9日 EU議会選挙 史上最も右寄りのEU議会成立
・6月13日~15日 G7イタリア開催、ウクライナ支援へロシア凍結資産の活用で基本合意
・6月14日 アルメニアはロシア主導の軍事同盟から離脱表明
・6月14日 フィリピンが中国の攻撃的な行動非難、南シナ海で中国船がフィリピン船に衝突
・6月15日 国際会議「平和サミット」がスイスで開催
・6月25日 中国、月の裏側で試料採取
・7月1日 中国、携帯電話やパソコンを検査し、アプリも調べられる新規定を施行
・7月4日 英国総選挙 野党労働党が大勝、スターマー党首が首相就任
・7月5日 イラン大統領選の決選投票で改革派のペゼシュキアン氏が当選
・7月7日 フランス国民議会選挙 決選投票で野党の左派連合が最大勢力に躍進
・7月13日 トランプ氏襲った暗殺未遂事件
・7月19日 バングラデシュで大規模デモ 学生など25人死亡 2000人以上けが
・7月28日 ベネズエラ大統領選挙、マドュロ大統領が再選
・8月5日 バングラデシュのハシナ首相が辞任、国外脱出
・8月16日 タイ貢献党党首のペートンタン氏が首相に就任
・9月21日 スリランカ大統領選挙 左派ディサーナーヤカ氏が勝利
・9月25日 中国 太平洋にICBM発射
・10月1日 NATO事務総長にオランダのルッテ氏が就任
・10月21日 ベトナムはルオン・クオン共産党書記局常務を国家主席に選出
・10月26日 ジョージア議会選挙 ロシアに宥和的な与党の勝利
・11月4日 モルドバ大統領選挙 親欧米派のサンドゥ大統領が再選
・11月5日 米国大統領選挙 トランプ氏勝利
・11月11日 北朝鮮軍部隊のロシアでの戦闘確認
・11月18日 インドが長距離極超音速ミサイル発射実験に成功と発表
・11月19日 バルト海で海底ケーブル2本が切断、「ハイブリッド戦争」の懸念高まる
・11月21日 国際刑事裁判所がネタニアフ首相らに逮捕状
・12月3日 韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が戒厳令宣言
・12月8日 シリアのアサド政権崩壊、アサド氏はロシアに亡命
【Ⅱ】2025年の展望
(1)ロシア・ウクライナ戦争
トランプ次期米大統領はウクライナでの戦争の早期終結を公約に掲げ、停戦仲介に意欲を示している。ロシアのプーチン大統領は、①ロシアが一方的に併合を宣言したウクライナ東・南部4州からウクライナ軍が撤収する、②ウクライナのNATO加盟は認めない、③ウクライナ現指導部を解任して非ナチ化する を停戦の前提として主張している。
一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、①ウクライナのNATO加盟、②占領されている領土はその後、外交的な手段で取り戻すことができる を停戦条件としている。
トランプ新政権によるウクライナに対する支援削減や早期の停戦合意要求、NATO諸国への防衛費増額要請などにより、ロシアに有利な停戦合意が成立するかも知れない。その場合、トランプ政権は「プーチンを勝たせた」と世界的に評価される可能性が高くなる。
停戦合意が進まないと、世界各地で安全保障環境の不安定化を招く恐れがある。
(2)イスラエル・パレスチナ戦争
中東情勢は2025年も、イスラエルの動向に大きく左右されることになりそうです。トランプ新政権はガザ紛争の停戦と戦後統治交渉をめぐりネタニヤフ政権支持を明確にするほか、イランとの徹底抗戦の構えを打ち出し、中東情勢がさらに悪化する可能性が高い。
ネタニヤフ政権は24年を通じて、イスラム組織ハマスをはじめとする親イラン勢力との戦闘を継続。米国で親イスラエルのトランプ新政権が発足後、イスラエルがイランに対してさらに強硬姿勢を取ることが予想される。
トランプ氏は24年12月、就任までにハマスが拘束する人質の解放が実現しなければ「(ハマスは)地獄を見る」と発言した。これを受け、ハマスに対してこれまで以上に過酷な手段を取ってもトランプ氏は支持するとの見方が広がった。イスラエル高官は地元メディアに「型破り」な作戦を行えると表明し、カッツ国防相は1月1日、人質解放までハマス攻撃を激化すると警告した。イスラエルは停戦合意が成立しても軍がガザの治安を管理すると主張しており、ガザに平和が訪れる見通しが立たない。
イランのアラグチ外相は24年末「核問題に関し、25年は重要な年になる」と述べた。トランプ氏がイランに対して強硬な態度で臨むと伝えられていることを念頭に、核開発の加速を示唆したとの解釈もある。親イラン勢力がイスラエルとの戦闘で弱体化し、シリアではイランが支援していたアサド政権が昨年12月に崩壊。イランを取り巻く状況は厳しく、窮地に立つイランは核兵器の開発によって体制の存続を図ろうとする可能性がある。
イスラエルはイスラム教スンニ派の盟主を自任するサウジアラビアと国交を正常化させ、イランを一層追い詰めようとしている。ただ、サウジはパレスチナ問題の解決に道筋を付けることを前提としており、ガザで戦闘が続く状況ではイスラエルの思惑を実現するのは容易でないだろう。
(3)テロ・誘拐の動向
①イスラム過激派の活動が活発化している。
・イスラエル・パレスチナ戦争に乗じて、シーア派系イスラム過激派がイスラエルや欧米を対象にテ
ロ活動を活発化させている。
・一時は弱体化したISが、2020年春頃よりシリア、イラク、アフガニスタンでゲリラ的戦闘を行っ
ており、2025年も攻勢が続く見込み。アフリカ各地でISの名称を使ってテロ活動する過激派組織
も増えている。
・アルカイダ系過激派のAQAP(アラビア半島のアルカイダ)やAQIM(マグレブ諸国のアルカイ
ダ)、及びアフガニスタンのアルカイダなどが散発的にテロ活動を行っている。
・その他の主な過激派組織として、パキスタン・ターリバン運動(TTP)、ボコ・ハラム(ナイジェリ
ア)、アルシャバブ(ソマリア)、ジェマ・イスラミア(東南アジア)等。
・欧米諸国を中心に、過激思想に染まってテロを行うホームグロウン型(自国育ち)やローンウルフ
型(一匹狼)のテロも散発。
②欧州、北米、オセアニアでは極右テロが目立ち、増大が予想される。
③反政府組織の活動
・トルコでPKK(クルド労働者党)のテロが散発
・ミャンマーで少数民族武装勢力や民主武装組織の活動が活発化
・スーダン国軍(SAF)と準軍事組織の即応支援部隊(RSF)との間で衝突が断続的に発生
(4)世界情勢の主なリスク要因
①トランプ2.0(第2次トランプ政権)の政策実現可能性が高まり、米国内にとどまらず世界経済や国
際政治の行方にも大きな影響
②重要選挙
・2月23日 ドイツ連邦議会(下院)選挙
・5月 オーストラリア総選挙
③台湾有事の危機
④北朝鮮の核・ミサイル開発、朝鮮半島情勢
⑤イラン核開発
⑥シリア、ミャンマー、アフガニスタン、イエメン、リビア、エチオピア等の問題国
⑦サイバー攻撃による国際緊張
【Ⅲ】NPO法人海外安全・危機管理の会(OSCMA)
①当会は、2019年4月より、菅原 出(国際政治アナリスト)が代表理事に就任し、「人を育て社会に
貢献する危機管理の総合シンクタンク」として、下記の4つの事業に取り組んでいる。
2024年1月~12月の主な活動は以下の通り。
1) 外交・安全保障プロジェクト
・外交・安全保障月例セミナーの開催
・外交・安全保障サマーセミナーの開催(9月)
2) 海外安全・危機管理プロジェクト
・OSCMA危機管理情報のデイリー配信
・海外における安全対策、危機管理対策についてさまざまな講演
・企業・団体の危機管理者向けにオンライン個別相談会の開催
3) 国際政治・外交安保を学べるオンラインアカデミー(OASIS)
・2022年10月開校、各分野の専門家が講座を担当
・25年は法人向け海外安全・危機管理e-Learningサービスをリリースする予定
4) 災害危機管理サバイバル教育プロジェクト
・72時間サバイバルコーチ養成講座(72時間サバイバル教育協会との共催で毎年11月に実
施)
①2025年も4つのプロジェクトの充実した活動に取り組みます。引き続き、当会のNPO活動へのご理
解、ご指導、ご支援の程宜しくお願いいたします。
(備考)2024年日本人・日本企業に関連した主な事件・事故・災害等
・1月1日 能登半島地震、珠洲市で発生 最大深度7
・1月2日 羽田空港地上衝突事故 5人死亡、1人重傷
・1月17日 紅海周辺の緊張高まる。日本の海運各社 運航を一時取り止め
・1月17日 英郵便局冤罪で富士通幹部が謝罪
・1月30日 中国で拘束された大手製薬会社の日本人男性社員に金杉大使が初面会
・4月19日 パキスタン・カラチで日系企業駐在員5人が乗った車列に自爆攻撃 3人負傷
・5月22日 ニューカレドニア暴動、日本人4人が豪に出国
・6月5日 ベトナム・ホーチミンで日本人男性が刃物で刺され死亡
・6月24日 中国蘇州で日本人学校のバス教われる親子ら3人死傷
・7月1日 ミャンマー軍がコメの販売価格巡り日本人を拘束、8月13日解放
・7月24日 ロシアが日本の団体・企業の代表など13人に無期限の入国禁止
・9月18日 中国深圳市で日本人学校の男児が刺殺される
・11月30日 中国が日本人の短期滞在ビザ免除
・12月10日 日本原水爆被害者団体協議会(被団協)がノーベル平和賞受賞
・12月18日 ベラルーシで23年7月に日本人男性がスパイ容疑で拘束が判明
・12月26日 ブラジル・サンパウロで日本人が強盗に殺害される
以 上
注:本ニュースは、海外に渡航・滞在される方が、ご自身の判断で安全を確保するための参考情報です。ニュースを許可なく転載することはご遠慮下さい。