香港:大規模な反中デモ
2014年07月16日
イギリスの植民地であった香港が中国に返還されて17周年を迎えた7月1日、民主派による反中デモが今年も開催され、主催者発表によれば、過去最大規模の約51万人が参加した。参加者らは、2017年に行われる香港政府トップを決める行政長官選挙について、「香港の将来は香港人が決める」、「真の普通選挙を導入せよ」などとシュプレヒコールを上げた。
1997年7月1日に返還された際、中国政府は、香港人による高度な自治が許される「1国2制度」を将来50年に亘って約束している。ところが、先月10日に中国政府が発表した「1国2制度」に関する初めての白書において、「香港に対し、(中国は)全面的な管轄権がある」と強調し、香港の権限は限定的なものとの解釈を示した。また、「行政長官は愛国愛港(国を愛し、香港を愛する)の人物でなければならない」と明記して、自由な立候補を事実上制限し、親中派以外の立候補者を事実上排除する仕組みを年内に構築しようとしているとされるため、香港市民の反中感情をこれまで以上に高める結果となった。
7月2日未明には、ビジネス街「セントラル(中環)」地区の車道で座り込みを続けていた市民や学生ら約1000人に対して、香港警察が強制排除に乗り出し、過去に例を見ない511人ものデモ参加者を拘束した。デモは取り敢えず収束したが、民主派は強制排除に反発しており、自らが求める選挙改革案が政府に受け入れられなければ、中環を占拠して都市機能をマヒさせる大規模な抗議行動を行うと宣言している。
こうした中、香港政府の梁振英行政長官が7月15日、2017年に行われる長官選挙に関する報告書を公表し、①産業界の代表らでつくる指名委員会が複数の候補を指名、②有権者が一人一票を投じる、の2段階の手続きを取るとした。報告書は中国の全国人民代表大会の常務委員会に提出され審議が行われるが、民主派が求める「一定数の市民からの支持があれば誰でも出馬できる制度」が、事実上否定されたことから、香港で抗議デモが行われる可能性がある。
中国大陸の玄関口といわれる香港には、香港日本人商工会議所に登録している会員企業が660社余り(2014年5月時点)、また12,600余名の邦人(2011年度末香港政府発表)が在住しているが、もし事態が悪化した場合は影響も少なくない。現地の最新情報を入手して、注意を怠らないよう、特に週末、繁華街(中環地区・銅鑼湾地区・尖沙咀地区など)では、抗議行動等が行われていないか周りの状況に十分注意を払う必要があります。 (芦野 昌弘)
注:本ニュースは、海外に渡航・滞在される方が、ご自身の判断で安全を確保するための参考情報です。ニュースを許可なく転載することはご遠慮下さい。