カンボジア:賃上げストライキ
2014年03月09日
カンボジアでは近年、主力品目である繊維縫製業で賃上げをめぐる労働争議が度々発生している。政府は、2013年5月、縫製・製靴労働者の最低賃金を61ドル(約6,000円)から80ドル(約8,000円)へ引き上げたが、ストライキは散発。昨年1年間のストライキ件数は前年比21.5%増の147件に上った。
2013年12月には、東部のバベット地区でストライキが発生し、これがきっかけとなって、野党の呼びかけに応じて、約9,000社あると言われるアパレル縫製工場の労働者が中心になり、10万人超の全国規模のストライキが行われた。1週間以上、ストライキは続いて、数百の工場が操業停止に追い込まれた。また、このストライキを鎮圧するための警官隊による発砲で、今年1月3日には、少なくとも参加者4人が死亡、30人あまりが負傷する深刻な事態にまで至った。政府は、最低賃金を月100ドル(約10,000円)に引き上げ、更に段階的に引き上げる計画を発表して事態の収拾を図っている。
上記のバベット地区は、ベトナムのホーチミン市に近いことなどから、経済特別区(工業団地)として開発が進んでおり、多くの日系企業も進出しているが、この労働争議のあおりをうけ、一時は工場の操業を停止せざるを得ない状況にまで追い込まれたところも少なくない。
アジア各国に進出している日系企業の多くは、最低賃金の上昇(中国、タイなど)や自然災害(2011年タイ大洪水)等を念頭に置き、アジア圏内でのリスク分散・拠点分散に注力し始めているが、労務リスクにも考慮する必要がある。カンボジアにおいては、2011年以来、進出する日系企業が増加の一途をたどり、カンボジア日本人商工会は、現在150社を超える企業・団体で組織・運営されるまでになっている。経済環境の変化に起因する待遇改善を求める労働者の動きは、時には労働争議やストライキに発展する可能性も否定できず、進出企業は、カンボジア国内の政治動向や経済状況、工業団地内で発生している事態、社員の日頃の言動、要望等に十分に留意して対処することが求められる。(芦野 昌弘)
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