ベルギー:連続テロとこれからの企業安全対策
2016年03月28日
3月22日午前8時頃(現地時間)、ベルギーのブリュッセル北東にあるブリュッセル空港(別名:ザベンテム空港)で相次いで2度の爆発があった。いずれも出発ロビーの保安検査区域の外側で、最初の爆発はSNブリュッセル航空とアメリカン航空のチェックイン・カウンター近く、2度目はスターバックス店の外側で起きた。
さらに、1時間後の午前9時頃、EU本部にも近い官庁街の地下鉄マルベール駅で爆発が起きた。これら3度の爆発で合わせて犠牲者は28人(空港14人、地下鉄駅14人)、負傷者は約340 人に上った。2人の日本人も(いずれも地下鉄駅で)重軽傷を負った。
事件の前の3月19日、ベルギー捜査当局は、昨年11月のパリ同時多発テロで実行犯の1人(唯一の生存者)であるアラブ系ベルギー人のサラ・アブデスラム容疑者(26才)を潜伏先のブリュッセル・モランベーグ地区で逮捕し、さらに新たなテロへの厳戒体制を敷いていたさ中に今回の事件が起きて、テロの脅威が再びベルギー、欧州を震撼させた。
治安当局の発表では、テロはイスラム過激派武装組織「イスラム国(IS)」による自爆テロで、実行犯はいずれもアラブ系ベルギー人で、空港テロはブラヒム・バクラウィ容疑者(29才、兄)とナジム・ラーシュラウィ容疑者(24才)で、地下鉄駅テロはハリド・バクラウィ容疑者(27才、弟)で、大きなバッグに爆弾を仕掛けて現場に持ち込み爆発させたと見られている。空港の監視カメラには上記2人の他に1名が一緒に映っており、逃走したものと思われる。
実行犯の3人は、昨年11月13日のパリ同時多発テロ事件にも何らかの形で関与した疑いが濃い。また、上記のサラ・アブデスラムの逮捕が、計画中の襲撃テロの実行を早めた可能性がある。
3月22日、ISがインターネット上に「事件は自らの作戦である」と主張する犯行声明を
出した。
ベルギーでは、このような大規模テロは初めてであるが、発生要因として、①国内には約63万人(総人口11百万人の約5.7%)のイスラム教徒がいるが、若者の中には、貧困、失業、差別、格差等から疎外感を抱いて不満を持つ者が少なくない。②その中に、ISの戦闘員としてシリアに渡った者が約500人いて、既に帰国した者も3~5割と推定される。③ベルギー治安当局の捜査能力が、必ずしも十分とは言えない状況等が上げられる。
ベルギーの治安事情は他の欧州各国にも共通するところが多い。報道によれば、ISの戦闘員になるために欧州からシリア等に渡った若者は5千人に上る。その内、欧州を標的とするテロ実行のためにイラクやシリアで訓練を受けた者は400人~600人いるとされる。欧州にはテロリストのネットワークがあり、今後も欧州でテロが起きる可能性が高い。企業は以下の対策もご参考に頂き、一層の対策を進めて頂きたい。
1)予防対策として
①テロ、誘拐、一般犯罪等の予防安全のため、海外に赴任・出張する社員に対して、安全講習の機会
を(継続的に)設ける。現地の事業所、事務所等でも安全講習を実施する。
②海外出張者は、外務省海外安全ホームページに掲載の「たびレジ」に登録する(便利な「簡易登
録」の方法もある)。
外務省「たびレジ」⇒ https://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/
今回のテロ事件でも、在ベルギー大使館から緊急一斉通報、最新海外安全情報のメールがたびたび
発出され、登録者の状況判断に役立った。また、「在留届」を提出した在留邦人には別途メールに
よる通知がある。
③テロの標的になり易い政府・治安施設,公共交通機関,観光施設,デパートや市場など不特定多数
が集まる場所を訪れる際は、周りの不審者、不審物に注意を払い,不審な状況を察知したら,速や
かにその場を離れる。
2)緊急事態発生時には
①まず安否確認。
②注意喚起、対応措置の指示、及び状況に応じて対策本部を設置する。
対応措置として、オフィス・自宅待機、出張自粛、公共交通機関の利用制限、店舗の臨時休業、メ
ンタル診断・相談等をあらかじめ検討しておけば、テロ発生時に速やかに指示を出せる。
③万一、社員が被害にあった場合を想定し、さまざまな緊急措置を事前に検討して、できるだけの準
備をしておくことは、いざという時に役立つ。
④社員は大規模テロ発生の際は、(二次被害を避けるために)原則24時間、外出・行動を控えて、危
険が去るのを確認する。
3)爆破テロ、銃撃の現場に居合わせた場合
①周囲で爆発音を聞いたら、伏せる、頑丈な物の下にもぐる。その後、逃げる又はその場に止まる
(第1の爆弾をおとりに、第2の爆弾が仕掛けられている場合がある)。
②銃撃音を聴いたら、伏せる、逃げる、隠れる、抵抗しない(又は防御する)。
(長谷川 善郎)
注:本ニュースは、海外に渡航・滞在される方が、ご自身の判断で安全を確保するための参考情報です。ニュースを許可なく転載することはご遠慮下さい。